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電子契約の有効性

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[電子契約の有効性]2020.8.1

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 新型コロナウイルスが猛威を振い始めて半年もたたないのに、世の中は大きく変わりました。その中の一つにリモート(在宅)ワークがありますが、大手企業では相当普及していても、中小企業ではハードウエアの問題もあってか、なかなか普及が進まないようです。ところで、大手企業でリモートワークが導入されているにもかかわらず、週の何回は会社に行かなくてはならないというケースがあるようです。何故、会社に行かなくてはならないかというと、上司の承認の「ハンコ」をもらいに行く必要があるからというものです。政府内でも、そんなハンコ文化は改革すべきだという意見が出てきたのですが、それを担当すべき現在のIT政策担当大臣である竹本直一氏が自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」(自民党はんこ議連)の会長を務めていることが判明し、シャレにならないオチになりました(竹本氏は、同議連の会長を辞めたそうですが)。

 ハンコが不要な契約として「電子契約」というものがあります。これは、2001年に施行された電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)に基づく契約形態で、ネット上で締結した契約について電子署名を従来の印鑑による押印と同じ効力を認めるというものです。すなわちA社とB社との間で、A社の代表者の電子署名とB社の代表者の電子署名により電子契約を締結成立させるというものです。電子契約法3条においては、「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と規定しています。このように、「電子署名」というのは、「これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。」と定義されていますので、重要なのは“本人だけが行うことができることとなるもの”という点になります。

 ところが、現在テレビでもCMを打っている甲社の電子契約サービスというのは、どうやら電子契約法で規定している電子署名を利用していないようです。というのは、A社とB社が締結したネット上の契約に、A社・B社とも“電子署名”をすることなく、両者が合致した契約内容に対して、甲社が「A社とB社との間で契約が締結されました」ということを“電子署名”するというものであり、電子契約法の想定する契約当事者同士の電子署名による契約締結ではないというものです。従い、電子契約法3条が、電子署名により作成された契約が、真正に成立したと推定効が認められないこととなります。甲社はあくまで立会人として“契約がA社とB社により真正に成立しましたよ”と表明するだけの話であり、本当にA社とB社で締結されたことまでを保証するものではないのです。これが、公証役場で公正証書として締結される契約書であれば、公証人がA社・B社両当事者の代表者を、面前で身分証明書などで本人確認をしますが、甲社の電子サービスではそこまでの本人確認はやっていないようですから、なりすましで契約をしようと思えばできてしまうことにもなりかねません。このあたり、立会人形式の電子契約サービスには法的問題点があると言わざるを得ないでしょう。やはり、電子契約を締結する当事者それぞれの署名が、電子署名としてなされる必要があると思う次第ですが、電子署名をしたい当事者の署名を印鑑証明書と同様の「電子署名証明書」を標準化・実行化していくのは、それはそれで大変だと思う次第で、なかなか電子契約が普及していくのはハードルが高いようです。
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