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ビッグモーター元社長の刑事・民事責任

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[ビッグモーター元社長の刑事・民事責任]2023.10.1

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 前回のコラムでは、ビッグモーターの会社自体が今後どうなっていくかについて予想してみました。今回は、ビッグモーター元社長・副社長の刑事責任及び民事責任がどうなるかを検討してみたいと思います。

 まず、刑事責任の問題ですが、現在ビッグモーターをめぐる刑事問題は、@顧客の自動車を故意に破損した「器物損壊」、A保険会社に不正に請求して保険金をせしめた「詐欺」、B営業所前の樹木を故意に枯死させた「器物損壊」の容疑が存在します。詐欺、器物損壊については、会社という法人が罰せられることはないので、一義的には、実際に顧客の車を破損した修理部門の人間、保険金不正請求した担当の人間、樹木を枯死させた営業所の人間が処罰されることになります。警察としてはまずこの“実行犯”の特定作業があれだけ多数の不正が行われたので、手間のかかる作業となると思われます。問題は、実行犯の上司、さらにはその上司である経営陣、特に兼重親子まで詐欺、器物損壊の刑事責任を問うことができるかですね。
 日本の刑法では、例えば何かの犯罪をグループで企図して実行に移した場合、実行犯だけが罰せられるのではなく、その犯罪を企図した“共謀”に参加していたものは、実際に犯罪行為を行わなくても共犯として罰せられるということになります。これは共謀共同正犯と言われるものです。地下鉄サリン事件などでは、実際にサリンをばらまいた実行犯のみならず、麻原彰晃も罰せられましたが、これは麻原もサリンを地下鉄内でばらまくという犯罪行為の“共謀”に参加していて、実行役などに指示をしていたということから共同正犯として罰せられたものです。従って、これらの詐欺、器物損壊について、どの程度の範囲で共謀が成立していたか、その共謀に兼重親子も参加していたのかということが問題となってきます。どの程度の範囲で共謀が成立していたかというのは、幹部会議の席などで、兼重元社長・副社長が「多少不正なことをやってもいいから売り上げを伸ばせ」という指示を出していたにとどまると、実際の器物損壊、詐欺についての共謀までが成立していたかが怪しくなります。元社長・副社長が「車にダメージを与えてもいいから」とか、「保険会社に多少負担させてもいいから」とか、「樹木を切ってもいいから美観を確保せよ」などと言う発言を幹部会議の席上でしていたとすると、共謀が成立して、兼重親子も共謀に参加していたと言えると思います。このあたりの立証が警察当局としては一番難しいところかと思われます。このあたりの立証については、幹部会議などに同席していたほか役員の証言などによるものかと思いますが、果たして同席役員がどれほど警察に協力するかが問題でしょう。同席役員に対しても共謀共同正犯が成立する可能性があるのであれば、司法当局と取引して、自分は不起訴にしてもらう代わり、兼重親子の発言等についての証言をするということもあり得るかもしれません。

 次に、兼重親子の民事責任ですが、これは前回のコラムで会社の借り入れ等に兼重親子が連帯保証や、家屋敷を担保に入れるということをしていなければ、いくら会社が倒産したとしても、借入金に対する弁済責任は生じないことになります。しかしながら、会社法においては、“取締役の第三者に対する責任”というものを規定しています。すなわち、取締役、執行役、監査役等はその職務を行うについて悪意または重大な過失があり、それにより第三者に損害を与えたときは、その第三者に損害賠償責任を負うとされています(会社法第429条)。兼重親子に対する責任追及にこれが使えないでしょうか。
 上述したように、詐欺罪や、器物損壊罪について兼重親子の共同正犯が認められた場合には、取締役であった兼重親子は、社長・副社長の職務を行うにあたり、“故意”で他人の財産を破損したり、保険会社を欺罔したり、地方公共団体の財産である樹木を枯死させたりという行為により、第三者に損害を与えたときには、損害賠償責任を負うことになります。損害を受けた顧客、保険会社、地方自治体が取締役であった兼重親子に損害賠償請求をしていくこととなり、裁判で認められれば目黒区の豪華自宅、軽井沢・熱海の別荘などを差し押さえて競売することも可能となります。私が、もし顧客・保険会社・地方自治体の立場であり、ビッグモーターという会社が倒産した場合には、この会社法の取締役の第三者に対する責任追及を考えると思います。

 刑事責任、民事責任、いずれの責任追及にしても一筋縄ではいかないので、司法当局には相当頑張ってもらう必要があるかと思う次第です。
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