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自民党派閥のパーティー券問題

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[自民党派閥のパーティー券問題]2024.1.1

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 2023年12月に入って、自民党派閥(特に安倍派のようですが)のパーティー券問題がクローズアップされ報道されるようになり、安倍派所属の大臣・副大臣・党幹部が事実上更迭されるという政治問題にまで発展してきました。いったい、このパーティー券問題は何が問題なのかを整理してみたいと思います。

 まず、パーティーなのですが、これは自民党など政治団体が、政治活動資金を稼ぐために「政治資金パーティー」を開催し、パーティー参加者にパーティー券を買ってもらい(相場は1枚2万円?)、政治団体としては、パーティー会場費など経費を差し引いた残りを政治活動費に充てることを目的として行われるものです。自民党などは多額の政党交付金を国からもらっているにも拘らず、議員個人や派閥などはそのおこぼれにあずかれないのか、盛んに議員個人や派閥で政治資金パーティーを開催しています。パーティーと言っても、出来る限り経費を抑えるためか、会場に行ってもせいぜいサンドイッチかジュースしかなく、それも人数分あるかないかで取り合いになることもあるようです。では、パーティー券を誰が購入するかと言えば、議員個人で言えば応援してくれている人々に買ってもらうということになりますが、派閥が開催する場合はその派閥に所属する議員一人一人に“ノルマ”を課して(というかノルマ分のパーティー券代を上納させるようですが)、それら議員が応援してくれている人々、多くは企業にパーティー券を買ってもらうということになります。

 ここまでは何ら違法性はないのですが、今回問題となった一つ目のポイントは、政治資金規正法においては、パーティー券を20万円以上購入した場合には、購入者の氏名、住所、職業や購入金額を「収支報告書」に記載しなければならないところ、神戸学院大学の上脇教授らの調査によると、各派閥とも記載漏れが見つかったというものです。これは確かに法律違反となりますが、形式犯的な違反であり、購入者の属性をあえて隠すという故意がない限り、悪性はさほど高くはないのかもしれません。

 しかし、問題となった2つ目のポイントは、議員へのキックバックがあったということです。今回の安倍派などのケースでは、所属議員が自分のノルマを越えてパーティー券を売ってきた場合には、ノルマ超過分について、派閥からその議員個人に対して“ご苦労さん代りという名目の裏金”として還流していたというものです。これが何故問題になるかというと、政治資金規正法では、公職の候補者が金品を受け取る場合、その政治活動に対する寄付が禁じられているということです。従い、今回の派閥から議員に対するノルマ超過分の裏金も「寄付」ということになり、政治資金規正法違反ということになるのです。どうやら、安倍派では現ナマで議員に対してキックバックをしていたようで、そうすると当然に収支報告書に記載されるわけもなく、議員個人で“所得”として申告しているわけでもないとのことです。そうしますと、収支報告書への無記載の違反という形式犯を越えて、議員個人では所得税を支払っていないという脱税(所得税法違反)の問題も生じてくるのです。このあたりが検察にとって“悪質”であると判断され、またその額が億単位ということで、強制捜査ということになったのだと思われます。

 今回は特に安倍派が狙い撃ちされているので、巷では、安倍政権時代に安倍晋三首相が無理やり、黒川氏を検事総長に就任させようとした黒川事件に対する腹いせだという人もいるでしょうが、一般人の感情からしても数億円の金が何らの税金も支払うことなく議員個人のポケットに入っていたことは看過できないからではないでしょうか。安倍派は親分が殺害された後も、“日本の政治を牛耳っているのは俺たちだ”などと言う思い上がりがこのような事件を起こしたのではないでしょうか。安倍首相殺害後に旧統一教会事件が問題となったときでも、安倍派の議員たちはあまり反省もしていなかった節があり、萩生田政調会長などは、両問題で当事者となっているので、やはりその政治責任、ひいては刑事責任は重いものと言わざるを得ません。この事件が安倍派の「終わりの始まり」になるのではないかとも思われます。
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