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井の頭公園の池のかいぼり

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[井の頭公園の池のかいぼり]2018.2.1

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 数十年前のことですが、マレーシアに出張し、土産にレトルトのカレーを購入し、その時は日本に直接帰らず、オーストラリアでの仕事があったので、その土産を持ってメルボルンの空港で入管手続きをした時の話です。入管職員から「このレトルトの中に何が入っている?」と質問されたので、「ビーフカレーですよ。」と答えたところ、いきなりサバイバルナイフでレトルトを引き裂かれ、内容物をチェックされ、確かに牛肉が入っていることを確認されたら、未開封のレトルトパックも合わせ全部任意放棄させられました。任意でと言っていましたが、任意で放棄しなかったら強制手続で身柄ごと拘束されそうでしたので、おとなしく従った次第です。後で豪州滞在者に聞いたところ、オーストラリアは歴史上ほかの大陸から切り離された大陸なので独自の生態系や固有種があるため、他大陸からの生物系の監視については並々ならない熱意があるとのことでした。しかしながら、生きた牛を輸入するのならばともかく、既に料理となってしまった牛肉片までに目くじらを立てるというのもすごいなと思った次第です。

 お正月の番組で、テレビ東京が「池の水全部抜く大作戦」というのを放映していました。これまでもちょくちょく季節ごとにやっている番組で、地方の池などの水を抜いて池の中の外来種を駆除し、在来種を保護するという企画のものですが、アリゲーターガーなどというとんでもない危険な外来種がでてきたり、良く見かける鯉が外来種だったりとか、日比谷公園の池からは鍋島藩上屋敷の瓦が出てきたりとか、なかなか想定を超えるものが出てきて面白い番組です。今回のお正月の番組でもお寺の池とか、関東近辺の公園の池とかの水を抜いていたのですが、どうやら、各市町村では池の水を抜くこと(「かいぼり」というのですが)は、予算的にきついので民放とタッグを組んでやりたいという意図が見え隠れしていました。
 それでも、やればそれなりの成果、すなわち外来種の駆除、在来種の保護という目的が達成できそうなようです。同番組を見て、吉祥寺の井の頭公園を散歩していますと、同公園内の井の頭池において1月13,14日にかいぼりが行われたとのことです。井の頭池のかいぼりは東京都と三鷹市、武蔵野市が実行委員会をつくって実施しており、平成25年度、27年度に続いて今回が3回目とのことです。今回、市民ボランティア約100人が、水が抜け浅くなった水たまりで魚や亀を捕獲して、駆除する外来種と保全する在来種に選別したとのことで、過去2回と比べて、外来種が減って在来種が増えた傾向がみられたとのことです。外来種はブルーギルなど、在来種はナマズやスッポンがみられたとのことで、この日捕獲した外来種は魚類4種160匹、エビ亀類など4種148匹、在来種は魚類5種298匹、エビ亀類など5種1372匹。総数で在来種が大きく上回ったとのことで、成果は毎回上がっているかと思われます。

 番組でも説明されていましたが、ブルーギルやブラックバスなどは釣りをする人が意図的に放流したものが日本在来種を駆逐して、カメなどは縁日で売られているミドリガメなどが家で飼えなくなったものを放流したものが在来種をこれまた駆逐して大繁殖しているというものです。
 では、このような外来種を池などに放出することは法律に反しないのでしょうか?実は、「外来生物法」という法律があり、その目的は、“特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することです。そのために、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。”と環境省の説明があります。特定外来生物について禁止されているのは、@飼育、栽培、保管及び運搬すること、A輸入すること、B野外へ放つ、植える及びまくこと、C許可を受けて飼養等する者が、飼養等する許可を持っていない者に対して譲渡し、引渡しなどをすることで、池にブラックバスを放出することも当然禁止されることとなります。この禁止事項に違反すると、(放出関係では)なんと3年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金が課せられることとなります。このあたり、罰則を厳しくすれば外来生物の放出がなくなるというわけではありませんが、まだまだ一般市民への浸透がなされていないのではないでしょうか。子供がアメリカザリガニやミドリガメなどを家で飼育していて、養いきれなくなったら“処分”してしまうのもかわいそうなので池に逃がしてあげるというのはどこの家庭でもありそうな話です。もとより、ブルーギルやブラックバスなどは、釣りをする人の楽しみのためというエゴで放出しているものであり、言い訳もないようですが、やはり国民上げて日本固有の在来種保護の重要性を意識していくことが肝要かと思います。

 本当は、琵琶湖を“かいぼり”してみたいところですが、公園の池でさえ相当な時間と準備がかかるものであり、琵琶湖の浄化ということでは何か他の作戦を考えなくてはならないかもしれません。それでも、各市町村の管理する池などでかいぼりを進めていくことが、ひいては国内の淡水環境の保全につながるものと考える次第です。
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