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小室家の金銭トラブル問題に関する文書

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[小室家の金銭トラブル問題に関する文書]2019.3.1

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 秋篠宮の眞子内親王の婚約“内定”者である小室圭氏が、さる1月22日、同氏母の元婚約者A氏との間の金銭問題について、釈明文書を代理人弁護士経由で公開しました。昨年11月、秋篠宮が、結婚するための相応の対応が必要と述べられたことに対する対応なのでしょうか。同文書の結論としては、小室圭氏母とA氏との間の金銭問題はすでに解決済みということを主張したかったようです。そこで、法的観点において、同文書から両者間の金銭問題を解析してみたいと思います。

 まず事実確認としましては、小室圭氏は、釈明文書において、次の点を主張しています。
@小室氏母とA氏は、平成22年9月に婚約をしたこと
A婚約期間中、小室親子ともども、A氏から金銭的支援を受けていたこと
B平成24年9月、A氏から婚約解消の申し入れがあり、小室氏母は受諾したこと
C小室氏母の方から、婚約期間中の支援の精算を申し入れたこと
DA氏からは、「返してもらうつもりはなかった」との説明があったこと
 小室圭氏は、これらの事実から、小室氏母が受けた金銭的支援(A氏の主張では最低でも430万円)については「贈与」であるとの法的主張をしているものと思われます。

 それに対して、A氏の主張(週刊誌などの“伝聞”ではありますが)は、@、A、Bの点に付いては認めて、両者に争いが無い事実となり、C、Dの事実が両者に争いがある事実、いわゆる争点となります。A氏は、Cの点に付いては、小室氏母からの申し入れはなく、A氏の方から精算を申し入れた、Dの点に付いては、返還を免除したことはないと主張していますことから、A氏は、小室氏母に対する430万円の貸付、法的には金銭消費貸借が成立しているという主張をしていると思われます。

 そこで、両者の法的主張が成り立つのかそれぞれ見てみましょう。まず、A氏の小室氏母に対する430万円の金銭消費貸借ですが、民法587条において、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。すなわち、成立する要件として、@「返還をすること」の合意と、A「相手方から金銭その他の物を受け取ること」つまり、金銭の交付を受けたことの2要件となります。この事案において、A金銭の交付を受けたことは、両者に争いのない事実ですので、@の返還合意があったかどうかということが争点となりましょう。両者間に金銭消費貸借契約書という文書が締結されていれば明確なのですが、それが無いというのであれば、A氏としては、小室氏母からメールなどでもいいので、「必ずお返ししますから」などという約束を立証する必要があることになります。小室氏のICU入学金などの使途毎に小室氏母の返還合意という直接証拠があればベストですが、それもないとなると小室親子が生活費を無心する際に、「10万円ほど貸して頂けませんか」というメールでの要請などを間接証拠として立証していくこととなりましょう。客観的に見て、契約書がなく、また返還合意についての直接証拠もないとなると、間接証拠をよほど積み上げても、裁判となったら裁判所がAの要件を認定するのは難しいのではないかと思われます。証人尋問と言っても、婚約者同士の密室での出来事ですので第三者の関与はないので、証人尋問による立証も難しいでしょうね。ということで、裁判となった場合には、A氏の小室氏母に対する430万円の返還請求は難しいと思われます。

 では、逆に、小室氏母のA氏からの430万円の贈与という主張は認められるのでしょうか。民法549条においては、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定されています。贈与が成立するための要件としては、@譲渡する者の財産を無償で与える意思表示があること、A 譲り受ける者のそれを受諾する意思表示があること、ということになります。本事案で言えば、@、Aとも贈与契約書を作成していないでしょうから、小室氏母は、A氏から贈与をする旨の意思表示をメールなりで立証する必要があり、その贈与の意思表示に対する受諾の意思表示を立証しなくてはなりません。上述したように、直接証拠がなければ間接証拠を積み上げることになりますが、既に婚姻関係にあった二人であれば無償の譲渡行為が正当化されるでしょうが、婚約関係において、430万円という多額の金銭を無償で譲渡するということは一般的感覚から言っても合理性があるとはいえず、これもなかなか容易ではありません。従って、小室母の方から、積極的にあれは贈与だったという主張することも、実は難しいということになります。

 そうしますと、この金銭的問題は両者の主張がいずれも立たず、うやむやに終わるのかということになりますが、一つA氏として考えられるのは、不当利得の返還請求ということが考えられます。民法703条においては、「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」と規定されています。本事案で言えば、小室氏母は、贈与ではないとすれば“法律上の原因なく”、他人であるA氏の財産により利益を受けて、A氏に損失を及ぼしているので、その利益の存する限度において返還義務を負うことになります。“利益の存する限度”の議論がありますがこれは長くなるので割愛させて頂きますが、一応、A氏から小室氏母に“金を返せ”という請求を成り立たせることが可能と言えます。

 本事案においては、A氏の側から訴訟を提起するといった動きはないので、逆に、小室氏側から贈与なのだけど解決金として支払うという和解を模索しているという情報もあり、どの様な解決になるかわかりませんが、小室氏の釈明文書の公開の効果は、国民の間で極めて不評であり、果たして和解ができたとしても秋篠宮殿下が期待した相応の対応と言えるかは疑問と言わざるを得ないといったところでしょうか。
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