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[ウエブ裁判]2019.6.1

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 来年(2020年)2月から、裁判所と弁護士事務所などをインターネットで結んだ「ウェブ会議」の運用を、東京、大阪など全国8地裁と知財高裁(東京)で開始することとなったようです。具体的な内容は公表されていませんが、「ウェブ会議」というのは、原告、被告の代理人弁護士が専用のアプリをパソコンに導入して、事務所でも出張先でも、インターネットを通じて裁判所との会議に参加できるというものです。イメージとしては、スカイプのようなテレビ電話システムを法律事務所と裁判所で構築するというものでしょうか。

 通常の民事裁判というのは、訴えを提起しますと、第1回の口頭弁論期日が指定され、(被告は1回目の弁論は欠席できますが)原告・被告両当事者が法廷に出廷しまして、両者の請求、主張がなされることとなります。しかしながら、1回の口頭弁論だけでは複雑な事件の争点が整理できず、多くのケースでは、次回以降は、弁論準備期日として指定されます。弁論準備期日は、法廷では行われず担当部の会議室(どこの会社でもあるような普通の会議室ですが、(弁論)準備室と言います。)で、裁判官と原告・被告の代理人弁護士が狭い会議室でまさに顔を突き合わせて、一体この裁判の争点は何なのかを証拠などを提出して整理していくという作業を協同して行っていくものです。争点整理が完了したところで、必要であれば、証人尋問を行って、和解ができれば和解しますが、最終的に判決ということになります。通常の民事裁判においては、この争点整理のための弁論準備手続に時間がかかることとなります。そこで、裁判所としては、法廷で行う口頭弁論に「ウェブ会議」の導入を想定しているのではなく、争点整理のための弁論準備手続への導入を考えているものです。

 現在でも、当事者(代理人を含め)が遠隔地に居住している場合は、「電話会議システム」を利用しています(例外的に、「テレビ会議システム」を利用する手続もありますが。)。「電話会議システム」というのは、いわゆるスピーカーフォンを使用するもので、裁判所の準備室において、原告もしくは被告のいずれかの当事者と裁判官が、スピーカーフォンで遠方の原告もしくは被告と争点整理を進めるという手続ですが、原告、被告のいずれかが裁判所に出向く必要がある手続きです。通常、被告の住所地の地方裁判所に訴え提起した場合は、被告の住所地の被告代理人が裁判所に出向き、遠隔地の原告代理人が電話で会議に参加するという形が一般的です。稀に、両当事者とも遠隔地だった場合は、各当事者の代理人が交代で裁判所に出向くこととなります。私も遠隔地で裁判したときは、原告の私も東京所在、被告代理人も東京所在でしたので、弁論準備期日毎に、原告、被告交代で長野新幹線に乗って佐久支部に出廷していました。

 今回のウェブ会議では、どうやら両当事者とも自分の事務所で争点整理手続に参加できるようで、そうしますと新幹線に乗って地方の裁判所に行くというケースは相当減少するかもしれません。また、現在は電話会議ですから、スカイプのようなテレビ電話方式であれば、裁判官、相手方当事者の顔色を見ながら争点整理ができるという点でも進歩かなと思います。ただ、新聞記事が書いているように、これで裁判の期間が短縮されるのではというのはどうかと思います。両当事者が出席しようと、電話会議で行おうと、ウェブ会議で行おうと、期日間で行うべき事務処理の作業が減るわけではないので、端的に裁判期間が短縮されるとは思えませんが、何処でもパソコンさえあればウェブ会議ができるということであれば、出張先でも参加できるので、日程調整は多少やり易くはなるのかもしれません。私自身としては、マイク付きカメラを購入して、専用アプリをインストールしなくてはならないかと思うと多少の投資は必要でしょうか。
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