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風と共に去りぬ(Ghosn)

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[風と共に去りぬ(Ghosn)]2020.2.1

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 バブル華やかな頃に、イトマン事件というのがありました。商社のイトマンの経営者が、許永中という在日韓国人らと共謀して、価値もない絵画や土地をイトマンに売りつけたといういわゆる特別背任事件でした。許永中は逮捕され勾留されていましたが、商法違反などで起訴された後に、その当時では巨額と驚かれた6億円の保釈金を預託して、保釈されました。ところが、保釈中に妻の実家の法事を理由に裁判所から旅行許可を得て、韓国に渡った後、行方をくらませてしまったのです。当然、日本の裁判所としては、保釈決定を取り消し、6億円の保釈金を没収されました。その頃の私は、もうこれで許永中も地下に潜って表には出てこないのだろうなと思っていましたところ、2年後に、なんと日本で身柄を拘束され再び収監されました。やっと、刑事裁判が開始され、結局、懲役7年6か月の実刑判決が最高裁判所で確定しました。その後も他の罪で刑期が加算されたようですが、韓国との間の取り決めで韓国内で服役したうえで仮釈放されたとのことです。その後、ニュースにも出てきませんでしたから、死んでしまっているのかとも思っていましたら、数年前にテレビ東京の「ガイアの夜明け」に出演していてびっくりした記憶があります。許永中の事件を通じて、私はどうして6億円もの保釈金(どうやらその半分を弁護団が立て替えていたという話も聞きますが)を捨ててでも逃走したのか、さらにはまたのこのこと日本に戻ってきて身柄を確保されたのか、そのころ理解ができませんでした。

 今回、日産自動車の元会長カルロス・ゴーンが2019年12月末に保釈中の身にありながら、日本から無断出国しレバノンまで逃走しました。日本はレバノンと犯罪人引き渡し条約を締結していないので、レバノンの了解を得られない限り、ゴーンの身柄が日本へ引き渡されることはないことになります。日本が現在、犯罪人引渡条約を締結しているのは、アメリカと韓国だけです。帰国が実現しなければ刑事裁判は開かれません。東京地方検察庁は、年が押し迫った12月31日、東京地方裁判所にゴーンの保釈取消を請求して、即日、東京地方裁判所は保釈を取り消す決定をすると同時に保釈金15億円も没取してしまいました。年が明けて1月2日には国際刑事警察機構により、本人に対して国際手配が行われました。

 一体、ゴーンはどのような算段をもって今回の逃亡劇を考えて、実行したのでしょうか。2020年になって予想されていた刑事裁判において、ゴーンは特別背任罪2件、金融商品取引法違反2件で訴追されていましたので、有罪となった場合、特別背任罪の最高刑は10年ですし、2件ありますから最高1.5倍になる可能性があります。まあ、現実のところ、検察もマックス15年で求めないでしょうから、落ち着きどころとして10年を切るあたりかと思います。しかしながら、裁判は相当長引くでしょうから、最高裁まで行った場合10年はかかるかもしれません。それから刑期を終えて出てきたとすると80代になっている可能性があり、ゴーンとしては残りの人生のほとんどが保釈中の身と刑務所で拘束される身ではたまったものではないと考えたのでしょう。上述しました許永中事件におきましても、保釈中に逃走したことは、懲役7年6月の刑期に含まれておりません。逃走罪というのは、“拘禁”されている状態で逃げ出すということで、国家の拘禁作用を侵害するから処罰されるというものです。出入国管理法違反などの刑が加算さるかもしれませんが、2020年も日本で実質的に拘束されるかと思えば大したことがないと判断して、日本脱出を実行したのではないでしょうか。手口としては鮮やかでしたから、まさにGhosn(Gone) with windといますかね。これで今後、外国人の保釈は厳しくなるものと思われる次第です。
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