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銀行送金手数料の壁

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[銀行送金手数料の壁]2020.3.1

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 我が家の屋根の上には、太陽光発電システムがあり、今までは東京電力関係会社に固定価格制度(FIT)で40.2円/Kwで売却していましたが、昨年(19年)12月にFITが終了となったので、新規電力事業者に売却することになりましたが、なんと4分の1の価格になってしまい、12月分の売却代金は600円弱というさみしい金額になってしまいました。それでも、今までは毎月東電から送金してくれていたので、楽しみに口座確認に行きましたら着金されていません。そこで、電力買い取り業者に電話したのですが、買い取り額が1万円以上にならないと送金しないというのです。何でも送金手数料が高いので、送金する方も受け取る方もペイしないからというものです。確かに、600円弱でも送金すると送金手数料が220円もかかるから手元には300円しか残らなくなってしまいます。

 なぜこんなにも国内の銀行送金手数料が高いのでしょうか。国内での送金については、正確に言うと「内国為替取引」ということとなり、銀行を主とする金融機関間においては、「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」というコンピューターと通信回線を通じた“手形交換”を行っています。ちなみに、資金決済法という法律があり、100万円を超える内国為替取引は、銀行業の登録を受けた業者しか行えないこととなっており、それら銀行業が加盟しているのがこの全銀システムというものです。全銀システムは、全国銀行協会傘下に一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが運営しているものです。最近の日経新聞に、“銀行の送金手数料にメス 公取委「半世紀不変」を問題視”という記事が載っていましたが、この全銀システムの銀行間手数料というものが1973年以降、50年近くも変わっていないというのです。このシステムでは、振り込む側の銀行が、振り込まれる側の銀行に銀行間手数料を支払うのですが、3万円未満の取引の場合1件当たり117円、3万円以上は162円ということです。この手数料額が下がらない限りは、一般人が銀行に支払う手数料が下がることがないというもので、こういう銀行取引に係る高コストが、フィンテックなどの金融サービスの進歩を妨げていて、ひいては国民の利益になっていないというのが公取委の考えのようです。

 やはり問題は、この全銀システムを金融機関しか利用できないというところにあるのではないでしょうか。金融機関としては、全銀システムは自分たちの上部組織である全国銀行協会が運営しているのだから、ぽっと出の昨日今日設立されたような会社には入ってもらいたくないと思っているのだと思います。いわば、全銀システム自体がカルテルとなっているといえないでしょうか。内国為替取引の決済システムという公共インフラについては、広く開放して、新規資金移動業者などが参加できるようなシステムにしていくべきだと考えます。そうすれば、競争原理が働き、銀行間手数料にも市場原理が働いていくものと思う次第です。

 このような全銀システムの壁に風穴を開けようとしているのが、LINEペイです。LINEぺイは今までアプリ内の自分のアカウントの残高を自分の口座に振り込むことしかできなかったのが、今回、他人の口座にも直接送金できるようなシステムを構築したというものです。どうしてそれが可能になったかというと、全銀システムのメンバーであるジャパンネット銀行の法人向け口座振り込みサービス路を経由するという方法を取ったことで、全銀システムのメンバーでないLINEペイが全銀システムを経由してどこの銀行の口座にも送金できるようになったということで、これが蟻の一穴となり、全銀システムが本当の意味で国民のための決済システムになっていくことを期待している次第です。
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