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最近の解決事例紹介(不動産編)− 使用貸借物件の明渡請求 2014.7.15

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 本件は、都内のワンルームマンション2室を所有している依頼者が、知人にこの2室を無償で貸しているところ、当該知人に退去してもらった上で売却したいのだが、退去してもらえないということで相談を受けたものです。その知人は、どうやら当該2室を会社の営業用に使用しているようでした。

 不動産物件を無償で貸しているということであれば、民法上の「使用貸借」であり、借地借家法上の『賃貸借』に比較して、借りている側の権利性は低いということになります。しかしながら、使用貸借でも使用借人(借りている当事者をこのように言います。)が任意で物件を明け渡してくれれば問題はないのですが、(理由はともかく)任意明渡しを拒否されると、例えば使用貸人がカギを勝手に変えたり、荷物を外に出してしまうなど自力救済をすることは違法行為であり、かえって使用借人から損害賠償を請求させることになりかねません。

 ですから、使用貸人としては、任意の明渡しがなされない場合、やむなく明渡訴訟を提起するということになります。使用貸借の明渡訴訟において、使用借人から予想される反論・抗弁は、@まだ使用貸借が終了していない、特に目的達成を終了要件とすると、目的未達成だから返還する義務はないという反論、Aそもそも使用貸借として借りているのではなく、賃貸借で借りているから、賃貸借終了には正当事由が必要だという2点になると思われます。

 今回は、Aの反論、すなわち使用貸借ではなく、賃貸借だというものでした。親族間における使用貸借ですと、このAの反論が出てくるケースが見られます。例えば、長男が父親所有の敷地に建物を建てて父親と住んでいる、ただし、地代など払っていないという場合で、長男から地代は払っていないが、父親の面倒を見ているので、それとの相殺だという反論がなされるというものです。
 しかしながら、裁判となれば、父親の面倒を見るのは、親族としての扶養義務の範囲内であり、地代としては認め難いという判断になるのが多いと思われます。非親族間の使用貸借におきましても、やはり使用貸人と使用借人とが全くの見ず知らずということはありえず、何らかの人的関係に基づいて無償で貸すのですから、そこには何らかの事情が絡んでくる可能性があるのです。
 今回で言えば、使用借人からは使用貸人に金銭を貸し付けているので、その貸金弁済と賃料が相殺されてきたのだという反論がなされました。結局は、使用借人側も貸金弁済の事実、および賃料に充当する合意を立証することができず、明渡しについての和解が成立することとなったのですが、それでも引越し費用に相当する解決金を支払うこととなりました。

 今回のようなケースについては、いくら使用貸借が賃貸借に比べて借りている側の権利が弱いと言っても、任意で明渡しをしてくれない場合には、自力救済が認められない以上、法的手続を踏まざるを得ず、和解となればやはり解決金を支払わざるを得なくなるのがほとんどだと思います。
 ということで、それでは使用貸借をする場合に、揉めることなく退去して頂くには事前にどのような段取りが可能なのでしょうか。「公正証書で使用貸借契約を締結してはどうか」というアイデアについては、公正証書で強制執行できるのは金銭債権だけですから、意味がないと言わざるを得ません。そこで、即決和解を簡易裁判所に申し立てて「債務名義」を取っておくということが考えられます。債務名義があれば、約束の時期に退去しなければ直ちに強制執行することができるからです。しかしながら、即決和解というのは、正式名称が「訴え提起前の和解」というくらいで、要は紛争があることを前提にそれを両当事者で解決案に到達しましたので、裁判所で判決と同じ効力を付与してくださいというものですから、通常は、紛争がないものに単に債務名義を取得するための即決和解の申立ては認めないということになろうかと思われますので、やはり確実な手段であるとは言えません。

 結局、使用貸借というのは、貸す方と借りる方の信頼関係の上に成り立つものですから、安易に無償で貸すことが、「(貸す方についても、借りる方についても)タダほど怖いものはない」ということにならないよう一考すべきものなのだと思います。
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