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最近の解決事例紹介(不動産編)− ビルの建替え案件(その2)2012.10.01

 さて、前回は、ビルの建て替えを行うには時間的な余裕が必要というところまで述べました。賃料が低いテナントについては、できる限り賃料を新規賃料相場レベルまで引き上げておくということでしたが、本件ビルに付きましても、賃料の低いテナントについては、さすがに新規賃料レベルまでには至りませんでしたが、ある程度賃料を上げたうえで、いよいよ建替え計画の構築です。

 本件でオーナーは、「自前資金(もしくは借入れ)で新規にビルを建て替え、新たなテナントに賃貸して、賃料で建築資金を回収していくというスキームを取った場合には、相当高いリターンがないと、金利動向次第で、借入金利が高くなって損益分岐点を越さなくなる可能性がある」と考えました。そこで、ディベロッパーとの共同プロジェクトとして、本件ビルを建て替えることを考えました。すなわち、「オーナーはビルの敷地を提供し、ディベロッパーがその敷地の上に建物を構築し、お互いが提供した出資の比率に応じて、当該土地・建物の持分を決める」という広い意味での等価交換によるプロジェクトです。色々な候補が出てきましたが、最終的には、会社としてしっかりした大手ディベロッパーがパートナーとなることになりました。共同事業で進めるというオーナーの決断は、ハイリスクな面を、パートナーとの間でリスク分担し、リターンの方も振幅の無いようにするという意味で、賢明であったと思います。

 さて、共同事業となった本件ビルの建て替えですが、事業計画をパートナー相互で練りに練り、固まったところで、いよいよ本格的にプロジェクトとしての開始となりました。まずは、当時20軒いた賃借人との立退き交渉です。このあたり、立退き交渉の話だけで別編が書けそうですが、相当割愛させて頂き、結論から申し上げますと、立退き訴訟まで出てくるかと予想していましたが、何とか任意交渉で、全テナントとの立退きに係る合意が成立し、順次立退きを開始して頂くこととなりました。

 さて、次の問題が一番重要なのですが、新ビルのキーテナントの決定です。銀座の他のビルもそうですが、いわゆる道路に面した1階の路面店テナントと、基準階(多層の建物で、基準になる同じような平面をもつ階のこと。)のテナントでは賃料が全然違います。アバウトな話で言えば、銀座エリアのビルで1階賃料が坪10万円とすれば、2階以上の基準階のテナント賃料はせいぜい坪3万円というところでしょう。従い、貸しビルの経営においては、路面階のテナントをキーテナントとして高い賃料を確保することが生命線となります。また、賃借人の側としましても、店舗としてできる限りの専有面積を確保するためにも、路面階だけではなく、2階、3階も1階とあわせて利用したいという要望も出てきます。その分、基準階の賃料水準よりも高い賃料を請求できるので、賃貸人側としても願ってもない話となります。本件新ビルにおいては、多数のテナント候補が出ましたが、最終的に商業テナントとの間で、地下1階、1階、2階という3層貸しで契約することとなりました。できる限り、店舗面積を広くしたいという賃借人側の要望、できる限り路面階のレベルに近い賃料で貸したいという賃貸人側の要望がマッチしたものです。

 キーテナントが決まって初めてビル建築の着工ということになりました。ビルの設計は、実力派の一級建築士にドローイングして頂き、施工業者は、日本で有数のゼネコンで、旧ビルの取り壊しから、ビルの完成まで無事故で施工されました。基準階のテナント・リーシングについても順調に進んでおり、来年早々に本格的稼働ということになります。本当に、ビルの建て替えというのは10年の単位で考えないといけない、ということが勉強になった事案です。