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厚生年金基金制度を考える |
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[厚生年金基金制度を考える]2012.11.1少し前のニュースであるが、平成24年8月24日に、長野地方裁判所で、次のような判決があった。長野県建設業厚生年金基金に加入していた土木業のA社が、同厚生年金基金からの脱退を求めたところ、拒否されたので、訴訟において脱退することの確認を求めたところ、脱退を求める請求を認めた判決である。 厚生年金基金とは何かであるが、いわゆる企業年金制度であり、企業や業界が、会社員の厚生年金に年金額を上乗せするために設ける制度であるとの説明がされる。よく、3階建て部分といわれるが、国民年金部分、厚生年金部分のさらに上乗せした(すなわち3階部分の)年金部分である。 今回ご紹介する裁判の事案は、A社が加入していた長野県建設業厚生年金基金(以下、B基金と言います。)が、平成22年に20億円を超える使途不明金が発覚し、実は当時の事務長(現在行方不明とのこと。)が業務上横領していたことが判明し、B基金の先行きに不安を感じたA社が、B基金からの脱退を申し入れたが、B基金代議員会で脱退を認めない決議をしたので、A社が裁判所に脱退を認めるよう提訴したものです。 裁判の争点となったのは、厚生年金基金制度には、公的な性格があることから、加入者に脱退の自由を認めていいかという点で、被告のB基金側は、“事業所の脱退を自由に認めていたのでは基金が存続できない”という理由で基金の代議員会で脱退を制限できると主張していました。判決は、確かに厚生年金基金には公的性格があるので、脱退に一定の制限を設けることには合理性があるものの、やむをえない事由がある場合は脱退できるとし、本件では、多額の使途不明金が出ており、運営方法に重大な疑義があるので、やむをえない事由があると認定したものです。 なるほど、B基金側の主張からすれば、確かにみんなで支えあって構成している基金なのだから勝手に脱退するのは虫がいいのではないかというようにも思えます。しかし、この裁判のA社はそんなに身勝手な加入者なのでしょうか。 私は、ここ数年で民事再生事件に数件関与しましたが、いずれも破産手続に移行してしまいました(もちろん、会社の“事業”は第三者に事業譲渡なりして、事業自体は継続され、雇用も確保されていますので、大打撃ではないのですが)。なぜかと言えば、民事再生を申し立てた会社が、それぞれの業界の厚生年金基金に加入していて、法的整理をするので、基金を脱退させてほしいと申請をしたところ、最終月の月掛け金の他に、法外な脱退時“特別掛金”なるものを請求され(法外、というのは私の感触での物言いですけれども、事業譲渡対価よりも高額の特別掛金を請求されました!!)、またこの特別掛け金が倒産法的に“優先債権”、すなわち取引先の買掛金とか、融資を受けている銀行の貸金債権などの一般債権よりも優先して支払わなければならない債権だからです。事業譲渡対価よりも高額であれば、優先債権全額を支払うことができないことになり、結局破産手続に移行してしまうというものです。 数年前までは、民事再生手続きでも、厚生年金基金が特別掛金の請求をしなかったのか、(弁護士でも、特別掛金が優先債権でないことを知らない人も結構いるくらいで。)ここ最近で起きている倒産案件における頭の痛い問題です。 そもそも、脱退時に法外な特別掛金を請求するということ自体、おかしいのではないでしょうか。例えば、本件のB基金は、事務長の業務上横領が原因で20億円もの“穴”を開けたものであり、加入者である事業所には何ら非がなく、金を持ち逃げした事務長を監督すべき当該基金の理事たちが本来責任を負って穴埋めをすべきものではないでしょうか。 事務長が金を持って夜逃げをするのは稀なケースかもしれませんが、AIJ投資顧問に虎の子の基金を預託していたような厚生年金基金でも同じ問題があるのではないでしょうか。単に、理事たちが「いやあ、やられちゃいました。しかし、悪いのはAIJで私たち理事は何の責任はありません。」ということですまされる問題ではないと思います。(ちなみに、かような基金の理事の多くは、社会保険庁などの天下りが多いとも仄聞します。)長野のA社をかばうわけではないのですが、A社は、“ちゃんと”脱退時の特別掛金まで支払うので、脱退させてくれと言っているのであり、それでも脱退させないという方がおかしいのは自明のことでしょう。 政府は、この長野の厚生年金基金の問題が特殊な例ではないと認識しており、最近になって、厚生年金基金制度自体を廃止しようという方針を出しました。ところが、廃止した時点で、今まで積み立ててきた基金が相当減価していることがそこで判明し、年金受領(予定)者としては、残った財産をみんなで一時金として分配することとなると、老後の生活設計が相当狂ってくるのではないかと危惧されます。やはり、老後のことは人任せにせず、自分で設計・管理していかなければいけないということでしょう。 |
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