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秘密録音の証拠能力と証拠価値 |
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[秘密録音の証拠能力と証拠価値]2021.5.1
秋篠宮眞子様の婚約内定者小室圭氏が、母親が元婚約者から受領した409万円についての28枚に及ぶ反論書を公開しました。平たく言ってしまえば、「婚約中にもらった金は贈与だから返す義務はない。元婚約者自身も返してもらうつもりはないと言っている。」というものです。また「解決金として元婚約者に支払うことは、借りたことを認めるので、小室家の名誉にかけてできない。」と啖呵を切っています。小室家の名誉の問題は、なんとこの反論文書公開のわずか4日後に、小室氏側から解決金を支払う用意があると言い出して支離滅裂感が半端でありません。では、元婚約者が「返してもらうつもりはない。」と言ったことを小室氏が録音していた問題については、法的にはどのように考えられるでしょうか。
小室氏のこの録音は、2012年9月13日の小室佳代氏・圭氏と元婚約者との面談において、どうやら元婚約者に無断で録音されたもののようです。そこで、まず無断録音されたものが(今回は訴訟にならないようですが、訴訟になったとして)訴訟上の証拠となるでしょうか?結論から言うと、秘密録音は、民事訴訟において、原則として証拠能力が認められています(刑事訴訟においては、違法収集証拠となり、証拠能力を認められない可能性があります。)。証拠能力とは、裁判において証拠として用いてられる資格のことをいいます。“原則として”と申し上げたのは、「著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集された場合」は、違法と評価され、証拠能力なしとされる可能性があります(東京高裁昭和52年7月15日判決)。著しく反社会的な手段とは、例えば、脅迫、暴力、もしくは不法侵入などの犯罪的行為によって録音したようなケースです。さらには、「諸般の事情を総合考慮し、当該証拠を採用することが訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に反する」といえる場合も、例外的に証拠能力なしとされる可能性があります(東京高裁平成28年5月19日判決)。この場合の信義則とは、民事訴訟の手続上求められる程度の相手方当事者の信頼を裏切るような訴訟行為をしてはいけないということです。例えば、審議が非公開であり、出席委員に守秘義務が課せられ、録音が禁止されていたといった委員会の運用に反して録音をしたような場合は違法性が高い、すなわち証拠価値が認められないと判断される可能性は高いでしょう。そうしますと、小室氏が、元婚約者との面談において、相手を脅迫して録音したような事情がなければ、まあ証拠価値としては認められるのではないでしょうか。 しかしながら、民事訴訟において証拠となりうるという「証拠能力」の問題はクリアしたとしても、果たして、裁判官が本当にそのようなことがあったのかという心証形成に対する影響の度合いとしての「証拠価値(証拠力)」は、また別の問題です。小室圭氏のながーい反論書の中で、元婚約者自身が「返してもらうつもりはない」と明言したと指摘しており、その前後の会話についても反訳(文字にすること)していますが、私が読んだ限りではどうもどのような文脈で、元婚約者が「返してもらうつもりはない」といったのかが明確ではありませんでした。小室氏が言うように、会話の途中から録音を開始しており、いわゆるいいとこどりをしたという感が否めなく、元婚約者が明確に債務者である小室佳代氏に対して、“貸付金”409万円の弁済免除の意思表示をしたと裁判官が証拠評価するかは極めて疑問ではないでしょうか。 小室氏の主張に対して、元婚約者は、「返してもらうつもりはない」と話した2012年9月13日から11カ月後の2013年8月6日、話し合いのため元婚約者の元を訪れた小室氏と小室佳代氏に対し「最初から『差し上げます』と言った覚えは僕は一言もない」と、元婚約者自身がその発言を否定する音声データがあると反論し、週刊文春のサイトでは(有料ですが)音声データも公開されました。正直、こちらの発言の方が明確に贈与ではないことを否定しているものであり、証拠価値はあるのではないかと思った次第です(これも無断録音かと思いますが、著しく反社会的でもないし、また、信義則にも反しないようですので、証拠能力は当然あるということで)。贈与であることを明確に言うか、借金を免除することを明確に言わない限り、なかなか小室氏側としては裁判官の心証を獲得できない一方、元婚約者が贈与を否定する発言の方が、裁判官の心証を獲得できる可能性があるのではないでしょうか。 このように、「録音があります!」と啖呵を切る人が多いのですが、よくよく聞いてみると証拠価値はあまりないというのが大半です。本当に、証拠価値を獲得したかったのであれば、小室氏も、元婚約者に対して、「○○さん(名前を具体的に言うのが重要)あなた、今『返してもらうつもりはない、』とおっしゃられましたが、それは、○○さんが私の母である小室佳代に対して、○年○月から○年○月までに渡り交付した金員の合計409万円については、贈与であると認めることですか、それとも、貸付金として交付したが弁済を免除するという趣旨ですか、明らかにしてください。」と聞き返して、元婚約者から明確な意思表示をもらうべきだったといえましょう。 |
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