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[安楽死させるのは犯罪か]2021.6.1
少し前までテレビ朝日の「朝まで生テレビ」で論客として出演していた人に、西部邁(にしべ・すすむ)という人がいました。東大在学中は全学連など左の活動をしていたのですが、80年代頃からは保守の論客として論陣を張っていた人です。ところが頚椎症などの持病のせいもあったのか、自殺について考えるようになり、とうとう2018年1月に多摩川で入水自殺を敢行してしまいました。これだけであれば、一インテリの自殺ということで終わったのですが、この西部邁の自殺を弟子ともいうべき2人がほう助していたことが明らかになりました。
日本の刑法では、自殺をほう助すると自殺ほう助罪(刑法202条)という犯罪になるのです。刑法202条は、「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。」と規定してあり、同条では、「自殺教唆罪」「自殺幇助罪」(合わせて、「自殺関与罪」)「嘱託殺人罪」「承諾殺人罪」(合わせて「同意殺人罪」)の4罪2類型を犯罪として規定しているものです。自殺関与罪と同意殺人罪は、行為者が直接手を下したかどうかで区別されます。自殺を決心している人に毒薬を提供するのは自殺関与で、本人の依頼を受けて毒薬を飲ませるのは同意殺人となるのです。 自殺したがっている人、殺されてもいいと思っている人に関与することが何故犯罪になるのでしょうか。自殺ということであれば、自殺したい人が自分で自分の生命を“処分”することは犯罪にならないのだから、その処分に関与したからと言って犯罪にならないということも理屈としてはあり得ます。 しかし、日本の刑法草案者は「殴ってもいいですよ。」「盗ってもいいですよ。」という身体・財産のレベルならばともかく、人の生命といういわば刑法で守るべき価値の最上位に位置する法益を守るためには、幾ら自殺したい人がOKしていたとしても、生命の処分に関与することは犯罪とすべきとしたのです。ちなみに、西部邁の自殺をほう助した2人は、自殺幇助罪として懲役2年の有罪判決を受けています(ただし、執行猶予3年が付きましたが)。 昨年、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者である女性から嘱託を受け同女性を殺して嘱託雑人罪で逮捕された大久保愉一医師、および山本直樹医師が、今回は、山本医師の父親について殺害したのではないかということで京都府警が強制捜査に踏み切ったというニュースがありました。この事件では、山本医師、大久保医師に加え、山本医師の母親までが殺人容疑で逮捕されています。山本医師の父親が入院していた病院を退院した直後に、都内のアパートで死亡していたというもので、死亡診断書がどうやら両医師により偽造されていたというものです。ALS患者女性の死亡については、捜査当局も嘱託殺人罪として責任追及しているわけですが、山本医師の父親の死亡については、現在のところ殺人容疑となっていますが、山本医師の母親(殺された父親の妻であろう)も逮捕されているところを見ると、嘱託殺人的な事情があるのではないかと推察できます。どうやらこの両医師は、他にも複数嘱託殺人に関与していたのではないかと言われています。 確かに、ALSの末期になると体が動かなくなり安楽死を望む人も出てくるのかもしれませんが、医師が患者を安楽死させたということは、医師の倫理からしても簡単に是認できるものではないでしょう。両医師からは、苦しみながら生きるということから救ってあげたいという気持ちから安楽死という嘱託殺人をあえて行ったのだと主張されるでしょうが、うまく言えませんが果たしてそれでいいのだろうかという気持ちがぬぐえないのです。きっとやはり生命という価値の根源に簡単に関与すべきではないという刑法202条の趣旨というものが、一般人の気持ちの中にもあるのだからだと思います。 西部邁の自殺ほう助についても、当時そのニュースを聞いたとき、もやもやとした「人の生命の処分に関与していいのだろうか」という気持ちになったことを思い出します。法的には、本人の明確な安楽死を求める意思の確認や、医師一人だけの判断で実行するのではなく、安楽死判定委員会の審議・承諾を得ることを必要とするなど、厳格な要件を経て違法性が阻却される(犯罪とはならない)場合がありうるということで、山本医師、大久保医師の一連の行為には“軽さ”が感じられるのは私だけでしょうか。 |
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