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紛議調停委員になって6か月 |
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[紛議調停委員になって6か月]2023.5.1
先月は、簡易裁判所の調停委員になって1年というコラムを書きましたが、実は簡裁の調停委員の他に、東京弁護士会の紛議調停委員にも就任して半年が経ちました。弁護士会の紛議調停手続というのは、弁護士法41条に基づき、弁護士の職務等に関する紛議について、その所属弁護士会において調停で解決を試みる手続です。全国の弁護士会(単位会)において紛議調停委員会が設置されており、所属委員によって調停を実施しているというものです。たとえば、最初の約束より高い報酬を請求されたとか、弁護士の辞任・解任の際にトラブルが生じて容易に話し合いがつかないなどの弁護士とのトラブルについて解決を図るというものです。
調停の申立ては、多くは弁護士に委任した当事者の方ということになりますが、弁護士からも委任者である当事者に紛議調停の申し立てをすることができます。依頼者である当事者の方から紛議調停が申し立てられると、まず紛議調停委員会の事務局で紛議調停委員に配転がなされます。私が所属する東京弁護士会では、紛議調停委員会の下に小委員会が多数組織され、まずは、申し立てられた新件は小委員会に配転され、小委員会の中でだれが調停委員を担当するかを決めるということで進めています。 紛議調停が申し立てられた後の流れとしては、基本的に通常の民事調停や家事調停と同様で、申立て当事者・弁護士双方の主張書面や証拠を元に、紛議調停委員が双方の話をよく聞き、合意成立をめざします。双方の合意が成立すれば調停が成立となり、調停成立の見込みがなければ不成立(不調)ということになります。なお、審理は非公開で取り進められます。 紛議事件の一つ目の分類としては、委任した弁護士が一応仕事はしてくれたのだが、請求してきた(成功)報酬が高額であり、何とかしてほしいという類型です。現在は、弁護士が事件を受任する際には、一部の例外を除き必ず「委任契約書」を作成するということになっていますので、たまに散見されるのですが、弁護士が委任契約を取り交わしてもおらず、事件終了後に高額な報酬を請求するというのは、基本的にアウトです。すなわち、もし懲戒請求を申し立てられたとすると、懲戒相当になってしまうケースでしょう。その場合には、調停委員から申し立てられた弁護士に対し、「委任契約書がないのはまずいですよ、懲戒されたらどうします」と説得して、申立した当事者も全く報酬を支払わないというのは稀ですので、申立当事者が納得するレベルの報酬額で和解を成立させるということになります。当事者と弁護士との間に委任契約書が締結されている場合でも、当事者の方からそれでも報酬が高いという申立てがなされることがあります。その場合は、弁護士が行った業務の内容を精査しますが、よくよく見ると必ずしも弁護士の努力で結果が出たとは言えないようないわばラッキーな案件もありますので、そのような場合は、やはり弁護士の方を説得して報酬を減額させるということになりますが、委任契約がある以上正当な報酬請求であるとして弁護士の方が調停に応じないケースも多くあります。その場合は、残念ながら調停は不成立で終了することとなります。 次の分類としては、申し立てた当事者の言い分は弁護士費用が高いというものですが、よくよく内容を見てみると、弁護士の業務の取り進めに過誤があった、いわゆる弁護過誤の事案というものです。弁護士が複数の解決案のうち、一つを取ったがその解決案では勝訴判決を勝ち取ることができなかったなどの事案については、これは結果論の話ですから、ストレートに弁護過誤とは言えないということになりますが、通常の弁護士であれば当然こちらの解決案を取るだろうことが想定されるにもかかわらず、あえて誰も取らないような解決案を取って敗訴したというようなケースでは弁護過誤となりかねませんので、その見極めが難しいケースもあります。しかしながら、何時何時迄に裁判所に書面を提出しなければならなかったのに、弁護士が提出を失念したというようなケースは、誰が見ても一発アウトですので言い訳ができず弁護過誤となりますので、そのようなケースでは、調停委員から「このケースは明らかな弁護過誤ですから、報酬の請求額を相当譲歩すべきではないでしょうか。ここで調停が成立しないようですと、当事者の方は次は懲戒請求を申し立ててきますよ。」とやはり、懲戒請求を盾にゆさぶりをかけて調停が成立するように持って行くということになりましょう。すなわち、ストレートに懲戒請求されず、紛議調停に持ち込まれたことにより、危うく懲戒処分を受けるところを紛議調停が成立したことにより避けることができるという機能も紛議調停制度には内包しているものと言えるでしょう。もちろん、紛議調停委員としては公平公正に取り進めることは当然のことではありますが。 依頼した当事者が紛議調停を申し立てる場合には多く、ご自身で申立書を作成されることが多いので、正直何が言いたいのかよくわからない申立書も散見され、やはり申立書作成には、別の弁護士に協力してもらうということが肝要かと思う次第です。当事者の言い分を審尋する際にも、弁護士が代理人として来て頂くと法的な整理がスムーズとなりますので、弁護士の同席も考えて頂ければと思います。ということで、紛議調停委員を務めていますと、同じ弁護士に係るものですので、“なるほどこういう場合に紛争となるのか”などと勉強になるケースも多々あり、他人ごとではない問題意識をもって務めている次第です。 弁護士法第41条 弁護士会は、弁護士の職務又は弁護士法人の業務に関する紛議につき、弁護士、弁護士法人又は当事者その他関係人の請求により調停をすることができる。 |
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