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アベノミクスの行く末

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[アベノミクスの行く末]2013.2.1

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 新年を迎えて安倍政権が本格的に稼働を開始しました。インフレターゲットを2%にすることを目標とした経済政策が着々と進められているようです。安倍首相の考えるように、“いい”インフレ循環となって経済が活性化すればいいのですが、所詮人間のやること、うまいこと2%のインフレ率に収まっていればいいのですが、神の見えざる手に反する領域のことで、インフレという鬼っ子が暴れ出した場合は、制御不可能ともなりかねません。
 そのような事態になると、アルゼンチンやトルコのようなハイパー・インフレとなり、国債などはだれも買わなくなりますから、国債の発行も借り換えもできなって、国家財政も破たんしてしまうであろうことは容易に予想されます。そして、もちろんのこと、頭のよい役人は、そのあたりまで考えているでしょう。

 では、どのように国家財政の破たんを防ぐのでしょうか。現在、相続税や所得税の見直しが行われているようですが、その他に預金封鎖・旧円新円切替という特別財産税による強行突破が予想されます。
 すなわち、ある日突然、おそらく金曜の夕刻あたりに臨時ニュースが流れ、「銀行預金が封鎖されることとなりました。一口座当たり、一日あたり引き出すことができる額は○○円です。」というような報道がされ、翌週の月曜から銀行に預金者が押しかける“取り付け騒動”が起こることが考えられます。政府としては、預金封鎖をした上で、直ちに旧円と新円を切り替える措置を発表し、その切り替えの際に、たとえば切り替え額の20%なり、30%なりを“特別財産税”として徴求するのです。この徴収された特別財産税を、国債のデフォルトに対応する財源にあてることが考えられるのです。そんなことが実際に行えるのかと思われる向きもありましょうが、アメリカですらもルーズベルト大統領が「バンク・ホリデー」を実施していますし、我が国においても、昭和21年に実施しています。前例がないことはないのです。

 確かに、日本で行われた昭和21年の一連の預金封鎖は、戦後のどさくさの旧憲法下で行ったものであり、また、占領下にあったことから、マッカーサーの天の声を根拠として強行突破したのではないか、現在の憲法下、また法律による行政の原理の下、そんな“むちゃくちゃなこと”ができるはずはないと反論される方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、法的にはクリアできる可能性は十分あると言わざるをえません。現在の法制においても、以下に述べるように、法的な根拠がないとはいえないのです。

 戦後の預金封鎖は、旧憲法下で制定された金融緊急措置令といういわゆる“勅令”により、実施されたものです。勅令というのは、明治憲法下において、天皇が大権事項について、帝国議会の協賛を経ることなく抽象的な法規を制定・公布する際に用いられた法形式の一種と説明されます。
 現在の新憲法下において、この明治憲法下の勅令が全て無効かというとさにあらずで、新憲法施行の際には効力があった勅令のうち、法律事項を内容とするもの(法律で定めなければならないもの)は経過措置後失効させ、法律事項以外のものについては廃止の措置がされない限り、勅令は政令と同じ効力を持つこととなっているのです。
 例えば、金融緊急措置令は、昭和38年に至り「金融緊急措置令を廃止する法律」により廃止されましたが、金融緊急措置令のうち、金融機関を規律するパートについては、「金融機関経理応急措置法」という法律が、新憲法施行前とはいえ法律として成立しており、その施行令である勅令「金融機関経理応急措置法施行令」という勅令は、今もって効力を有するとされているのです(その根拠は「日本国憲法施行の際現に効力を有する勅令の規定の効力等に関する政令」にあります)。つまり、特別財産税を課すための前提手段である預金封鎖については、法令及び政令のレベルで根拠があるようなのです。
 また、預金封鎖後の特別財産税については、直ちに国会で決議するということでも対応できるのではないでしょうか。預金封鎖を金曜の夕刻に出してしまい、最短で土日で決議して即日施行してしまうという荒業もできないことはないでしょう。民事執行とパラレルに考えるならば、競売の前提手段である差押えについては、法的根拠があるということになるのでしょうか。

 さて、2004年に決済性預金が導入された時は、事業資金などは、預金保険対象外すなわち全額補償するというために作られたと納得していましたが、穿った考え方をすると、実は、普通預金でも個人の非事業性資金については、預金封鎖の対象とする一方、事業者の普通預金のうち決済性預金としたものについては、預金封鎖の対象外とするということなのかと深読みしてしまいます。
 それでも、どうやら万が一にも預金封鎖が起きることに対処しておくならば、個人事業者の方も、事業性資金については決済性預金に変更しておくべきかと考えます。また、定期預金は、預金封鎖の最大の目標とも思われますが、そうであるとすれば、解約してインフレに強い資産に換価しておくのがベターということになるのでしょうか。

 最後に、外国にある銀行預金は預金封鎖の対象となるのでしょうか。これは日本政府が口を出すことができる範囲内か、外かがメルクマールですから、たとえ外国銀行の日本支店に作った口座でドル預金していても預金封鎖の対象となるでしょう。一方、外国に所在する銀行の預金口座であれば、逆に日本円建預金であっても預金封鎖の対象外となるのではないでしょうか。

 以上のことは、あくまでの弁護士神田元としての個人的見解にすぎませんので、最終的なご判断はお読みになった各人でお願いいたします。

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