賃料減額や不動産関係の弁護士なら神田元経営法律事務所へ
神田元経営法律事務所 TEL:03-6418-8011
平日 9:00〜17:00
お問い合わせ

ジャニーズ事務所の賠償問題

TOP > ジャニーズ事務所の賠償問題

業務内容

神田元経営法律事務所
〒107-0062
東京都港区南青山5丁目11番14号
H&M南青山EAST301号室
地図はこちら

[ジャニーズ事務所の賠償問題]2023.11.1

シェア
 故ジャニー喜多川のジャニーズ事務所所属メンバーへの性加害問題は、昔から一般人にとっても、噂のレベルでは語られていたことでした。もちろん業界内では常識の話だったのでしょう。ジャニーズからテレビ局などへの締め付けや、今ほどコンプライスがうるさく言われていなかった時代ですので、若い男性をマネージする会社だからそういうこともあり得るのかなというのが世の中の認識ではなかったでしょうか。

 ジャニーズ事務所を揺るがす創業者の性加害問題につきましては、2023年9月7日、ジャニーズ事務所が、まず第1回目の記者会見を行いました。会見の冒頭、藤島ジュリー景子社長は株式会社ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川の一連の性加害について、会社としても個人としても認め謝罪しました。藤島ジュリー景子社長は、9月5日付で同社社長を引責辞任し、後任の代表取締役に所属タレントの少年隊東山紀之が同日付で就任した旨発表しましたが、藤島ジュリー景子社長は「被害者への補償を責任をもって全うするため」として、株式会社ジャニーズ事務所の代表取締役に留まることも発表しました。

 続いて、10月2日、ジャニーズ事務所の2回目の会見が開かれました。この会見では、ジャニーズ事務所は、タレントの育成やマネジメント事業から撤退し、会社名を10月17日付で「SMILE-UP.」に変更することが発表されました。SMILE-UP.社において、ジャニー喜多川性加害被害者への補償を行い、補償完了後は廃業するとの説明をしました。SMILE-UP.社とは別に新しい会社を設立し、現在ジャニーズ事務所に所属しているタレントのうち希望する者と、個人またはグループの単位でマネジメント契約からエージェント契約に切り替えていくことを発表しました。新会社の代表取締役社長には東山紀之、副社長は井ノ原快彦が就任することが発表されました。なお、藤島ジュリー景子社長については、SMILE-UP.社に留まり補償に専念することとし、新会社には一切関わらないと発表しています。

 ここで、マネジメント契約とエージェント契約という言葉が出て来ましたので整理すると、マネジメント契約とは、現在、日本の多くの芸能事務所が採用している契約形態で、営業からギャラ交渉・契約・スケジュール管理・トラブル対応など、芸能人の芸能活動に関わる全てを芸能事務所が行なうシステムです。言ってみれば、会社の従業員になるようなもので、給料分としての“ギャラ”は保障されるが、売り上げ全部は自分のものにできないということなります。従って、売れない芸能人は給料が保証される分安心ですが、売れっ子芸能人の場合は、売り上げの多くを芸能事務所に吸い上げられるということで不満が生じることもあり得ます。だから、独立問題とか起きるのでしょう。

 一方、エージェント契約とは、本来芸能人自身がやらなければならないテレビ局などとのギャラの交渉など仕事を取ってくる業務を芸能事務所が代行してくれるシステムで、それ以外のマネジメント業務は全て自分で行なわなければならないという契約形態です。言ってみれば、従業員となるようなマネジメント契約と違い、芸能人の個人事業主としての側面が現れるということになります。芸能人が事務所にエージェント業務を行ってもらう手数料を支払うことになるので、売れっ子芸能人にしてみれば、自分の手取りが大きくなるということになります。しかし、売れない芸能人にしてみると、固定的な給料は保障されないということなります。エージェント契約は、加害では通常の契約形態と言えましょうか。

 さて、ジャニーズ事務所の今回の改革に戻りますと、ジャニーズ事務所の名称変更したSMILE-UP.社は性加害の被害者に対する補償業務に専念するということの一方、新会社がタレントのエージェント業務を行うということですが、この新会社はだれが出資するのでしょうか?倒産法の世界では、経営危機に瀕した会社が負債をもとの会社(ジャニーズにあてはめればSMILE-UP.になります。)に置いて、健全な事業(ジャニーズで言えば、エージェント業務になります。)を別会社に譲渡して、その別会社に譲渡した代金をもとの会社での負債の弁済に充当するということが多く行われます。
 しかし、倒産法の場合では、健全事業を譲り受ける新会社は、通常スポンサーという第三者が資本投資するものであり、すなわち元の会社の株主とは全く別の株主になるというのが筋です。ジャニーズにあてはめるのであれば、エージェント会社である新会社については、藤島ジュリー景子の“資本”が入っては、結局経営が一新されないということになるわけです。多分、エージェント業務については新たに資本を調達しなくても小資本でできる業務なのでしょうか、ですからとりあえず藤島ジュリー景子が数十万円でも資本金として出しておこうかという安易に進めている可能性があります。このあたり、マスメディアも追及しないのが不思議です。少なくとも、藤島ジュリー景子の金ではなく、東山紀之なり所属タレントたちが少しずつでも資本金を出し合って新会社の資本金とすべきだと思う次第です。それでこそ最低限、ジャニーズが生まれ変わったと世間に対して言えるのではないでしょうか。ジャニー喜多川も姉のメリー喜多川もあの世で本件をどのように思っているのでしょうか。
シェア