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兵庫県知事の犯した過ち

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[兵庫県知事の犯した過ち]2024.10.1

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 齋藤元彦・兵庫県知事がその地位を追われるような状況に陥っています。百条委員会が開かれて、色々と知事の悪行が暴かれていますが、知事という地位に納まってしまい、独裁者になってしまったのでしょうか、やりたい放題という感じがします。例えば、カニ漁の視察に行った際には、お土産のカニを要求し、もらったカニを部下と分けるのでもなく、自分が全部ひとり占めしてしまうという極めてみみっちい話から、公用車が入るべき玄関の20メートル手前に止まってしまったことに腹を立てて部下を怒ったなど人間としての小ささが顕れているようなパワハラ話まで、よくぞこんな人間を知事に選出してしまったものだと呆れる限りです。兵庫県民も選挙の時にそこまで見抜くことはできなかったとしても。しかしながら、一連のニュースの中で一番公職者としての知事としてあるまじき悪行は、県職員が公益通報をしたにもかかわらず、齋藤知事は、その職員を懲戒処分してしまい、その職員が自殺してしまった事件ではないでしょうか。これは本当に許されない。

 公益通報者保護法において、公益通報とは、企業などの事業者による一定の違法行為を、労働者(公務員も含まれます)などが、不正の目的でなく、組織内の通報窓口、権限を有する行政機関や報道機関などに通報することをいいます。事業者は、労働者が公益通報をしたことを理由としてその労働者を解雇した場合、その解雇は無効となります。また、解雇以外の不利益な取扱い(例えば、降格、減給、退職金の不支給等)も禁止されます。また、事業者は、公益通報によって損害を受けたとして、公益通報者に対して損害賠償を請求することはできません。

 今回の事件というのは、前兵庫県西播磨県民局長の男性職員は2024年3月中旬、一部の報道機関などに告発文書を送付し、4月に県の公益通報制度を利用し、文書と同内容を通報したというものです。しかし、兵庫県は同職員の告発を公益通報として扱わず、文書を把握した直後から告発者の特定に動いたというものです。当時副知事だった片山安孝氏が男性職員を聴取し、同職員の公用パソコンから告発文書のデータが見つかったことなどから、県民局長から解任し、同年5月には「(文書は)核心的な部分が事実ではない」として、男性職員を停職3か月の懲戒処分としたというものです。同職員は、同年7月に死亡しているのが発見され、どうやら自殺したものと見られています。今回の百条委員会での証人尋問において、齋藤知事は、「告発というより 誹謗中傷性の高い文書だと思った。作成した人を特定し、聴取するのは問題ない。」と主張し、男性職員が24年3月、県の人事当局の聴取に「うわさ話はあちこちにある。それを集めた」と話したことを根拠に挙げ、「具体的な供述や証拠がなく、真実相当性はない。公益通報に該当するとは、今でも思っていない」と述べたというものです。県の内部調査に協力した藤原正廣弁護士は、「文書の内容だけをみれば、真実相当性が認められないので、元局長に対する不利益な取り扱いは禁止されず、懲戒事由があるから処分は可能だという見解だ。」と述べ、法的に問題ないという認識を示しました。しかしながら、百条委員会が、公益通報に詳しい奥山俊宏・上智大教授に参考人として見解を聞いたところ、奥山教授は、「文書の送付を理由とした圧迫的な聴取、解職、懲戒処分などは全て、保護法に違反する」などと批判し、疑惑を指摘された知事や県幹部が主導して内部調査を行い、処分したことについて、「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような構図だ」と語ったというものです。

 そもそも、公益通報者保護法が何故できたかというと、組織の内部で犯罪などが行われていたとしても、組織における上下関係などからなかなか内部の人間がその悪事を捜査当局などに通報することが難しいので、そのような“公益”に資する情報を外部に通報したからと言って不利益を受けないようにして、第一次的には通報者の利益保護、究極的には社会的正義の確保を目指すというものです。
 そうだとすれば、公益通報を受けた者、多くの場合、今回の兵庫県のように県組織内に通報窓口になるわけですが、同法の立法趣旨からすれば、組織の内部の立場で“勝手に”「公益通報」の解釈をするのではなく、公平公正な立場である第三者に判断してもらうべきだったと思います。企業の内部通報制度でも多くは弁護士が対応者になるのですが、今回の藤原正廣弁護士(県の顧問弁護士でしょうか。)のように、兵庫県におもねるような判断をするような弁護士では意味がないので、弁護士会などに要請して、全く何の利害関係もない公平公正な弁護士に「公益通報」の対応をしてもらうべきだったと思います。

 これほど叩かれても、齋藤知事は自ら辞任するつもりはないようで、なぜそこまで知事の地位に恋々とするのか、私であればとてもいたたまれなくなって辞任すると思うのですが、なかなか心臓に毛でも生えているようで、ストレス耐性が強そうな人物なのでしょうか。このコラムがアップされている頃には、何らかの結論が出ていることを期待します。
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