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民法改正中間試案について

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[民法改正中間試案について]2013.4.1

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 法制審議会が、2月26日に民法改正についての中間試案(ただし、今回は債権法に関わる部分ですので、家族法とかの改正ではありません。)を明らかにしました。色々な改正案がありますが、その中でもマスコミでクローズアップされているのが、「保証人保護の方策の拡充」というところではないでしょうか。保証人保護の方策の拡充において取り上げられているのは次の4点です。

 まず、個人保証の制限ということで、基本的に会社の貸金債務については、「いわゆる経営者」にしか保証を徴求できないようにすることを法文化するかが論議されています。次に、契約締結時の説明義務・情報提供義務として、保証契約を締結するときは、保証人に対し、保証契約の内容を説明する義務があるというものです。また、主たる債務の履行状況に関する情報提供義務として、主たる債務者が延滞を生じさせているときなどに保証人に対してもその事実を通知する義務があるというものです。さらに、保証人が個人である場合、その責任を制限するために、裁判所は、種々の事由を考慮して、保証債務の額を減免することができることや、保証債務締結時に保証債務の内容が保証人の財産・収入に比べて過大であったときには、その過大部分を請求できないこととするなどです。

 個人保証の制限という点では、現在金融機関は、企業に融資する際、「いわゆる経営者」以外の連帯保証人をつけることが横行していますので、義理人情、親族関係から連帯保証人にならざるを得ないという状況がなくなることは、重要な改正点であると思います。本来ならば、企業に融資するのであれば、当該企業の信用力のみを弁済の担保とすべきであるにもかかわらず、金融機関は、自分たちの審査能力が乏しいことをカバーして、万が一の時に備えた方策を取り、自分たちのリスクを取る部分を極力小さくしてきました。
 すなわち、保証協会付き融資であり、連帯保証人を取ることであり、また会社所有以外の土地建物に抵当権を設定して物上保証をさせることであり、いったい企業を育成すると標榜している金融機関として、どこがリスクを取って融資していると言えるのかはなはだ疑問でした。今回のこの保証人の制限では、「いわゆる経営者」のみの保証に限定することは、かような歪んだ融資状況を改善する一歩となりますが、「いわゆる経営者」の定義ももっと明らかにすべきだと思われます。
 というのも、融資を受ける会社の経営者といっても、雇われ社長もいるわけですから、その様な立場の経営者は、「いわゆる経営者」から除外して、あくまで会社のオーナー経営者に限定すべきかと考えます。私は、よくクライアントには、「会社の経営責任は三位一体であるべき」と話していますが、三位一体とは、会社の株式を支配し、代表権を有しているからこそ、連帯保証債務を負うこともやむを得ない(株式=代表権=連帯保証)ということです。つまり、会社を経営し、うまくいくときには株式価値の向上というメリットを享受できるからこそ、ダメになったときには損失責任を負うというハイリスク・ハイリターンが成り立つわけで、株式も持っていない雇われ社長がその様なハイリスク・ローリターンに甘受する理由がないと思うのです。この点、法制審議会にさらに突っ込んで議論を深めてもらいたいと思う次第です。

 個人の保証人の責任軽減策についても、裁判所が、主たる債務の内容、保証契約の締結に至る経緯やその後の経過、保証期間、保証人の支払能力その他一切の事情を考慮して、保証債務の額を減免することができるとすることも革新的な改正事項だと思います。現在では、金融機関から保証人に対する保証債務履行請求訴訟が提起されても、“保証契約の締結に至る経緯やその後の経過”は、単なる事情に過ぎず、これを以て保証額を減額する法的根拠がありませんでしたから、請求訴訟においては、裁判所はゼロもしくは100という判決しか書けない状況です。
 通常、連帯保証人が自筆で保証人欄に署名していますから、なかなか保証否認ということも主張できないので、100支払いなさいという判決になるわけで、保証人にとって過酷なシステムであったので、裁判所による減免を可能にすることで(“免”というからには、事情によっては100%免除もありうるということですね。)、事情に即したすなわちゼロから100の間のどこかに目盛を合わせることができる柔軟な判決ができるというのは、過酷な連帯保証制度を緩和する結構強力なツールになるものと期待できましょう。もっと突っ込むのであれば、当該改正後の保証債務のみならず、民法改正時において存在する保証債務についても、当該裁判所の任意減免条項を適用できるようになると、よりベターではないかと思う次第です。

 保証債務のみならず、他の民法改正事項についてももっと国民の間での議論が必要かと思う次第です。
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