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不正競争防止法とは?

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[不正競争防止法とは?]2013.12.1

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 11月に入り、関西のホテルのレストランでの虚偽表示問題がニュースとなりました。また、昨年の秋、逗子市で起きたストーカー殺人事件において、犯人が雇った探偵が被害女性の住所を京葉ガスから不正に聞き出したとして逮捕されたという事件が報道されたばかりです。この二つの事件、一見何ら関係がなさそうですが、実は両事件とも不正競争防止法に関わる事件なのです。

 “信州産そば”と謳っておきながら、実は中国産だったという関西のホテルの虚偽表示事例につきましては、(優良誤認の点については景品表示法に関わる問題もありますが、)不正競争防止法2条1項13号の「誤認惹起行為」(商品、役務やその広告等に、その原産地、品質、内容等について誤認させるような表示をする行為)にあたる可能性があります。
 リーディング・ケースとして、「氷見うどん事件」というのがありまして、富山県氷見市内で製造もされず、その原材料が氷見市内で産出されてもいないうどんに「氷見うどん」等の表示を付して販売する行為は、原産地の誤認に該当するとして、損害賠償(約2億4000万円)を命じられたというものです。また、皆さんもよくご存じなものには、食肉加工事業者が鶏や豚などを混ぜて製造したミンチ肉に「牛肉100%」などと表示し、取引先十数社に約138トンを出荷する等して、代金約3900万円を詐取した行為につき、商品の品質を誤認させるとして不正競争防止法及び刑法(詐欺罪)に違反したとして元社長に対し、懲役4年の刑が科せられたという「ミートホープ」事件があり、刑事罰まで課せられる可能性があるのです。今回も、某ホテルでは「稲庭風うどん」ということで提供していたのですが、“風”ならば何でもいいのかと言えば、酒税法上「みりん」とは認められない液体調味料を、あたかも「本みりん」であるかのような商品表示を行い販売した業者に対し、販売の差止め、損害賠償(約260万円)が命じられた「本みりんタイプ調味料事件」というのがありますから、結構適用が厳しい規定と言えます。

 逗子ストーカー事件に関する不正情報入手については、犯人から雇われた探偵が京葉ガスが保有する顧客情報をあたかも自らが契約者のように装って取得したことが、不正競争防止法2条1項4−9号に規定する「営業秘密関係」の侵害(窃取等の不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為等)に該当するというのが逮捕の理由のようです。確かに顧客情報は営業秘密を構成するものですが、本号の典型的な例というのは、勤めていた男性用かつらの販売会社を退職する際、当社の顧客名簿を無断でコピーし、これを基に独立開業後顧客の獲得を行った業者に対し、不正に入手した顧客名簿のコピーの廃棄及び損害賠償を命じた事件のようなものであり、不正競争防止法の趣旨が、その名の通り、“不正な競争を防止”することにあることからすれば、確かに個人の情報を“不正に”入手することは許されないことでもあるし、それが原因でストーカー殺人事件が起きているのですから、責任重大としても、“不正な競争”のために入手したわけではないので何か違和感があります。

 不正競争防止法というのは、既存の法律でカバーできない法の盲点をカバーしていくという機能を果たしており、何か『ぬえ』的な存在です。たとえば、上述の営業秘密の保護というのは、特許のような公開・登録されているような知的財産権であれば、特許法で差止め、損害賠償を請求していくことができるのですが、コカコーラの原液のように公開してしまえば、だれでもコカコーラと同じものを作れてしまうようなレシピのような知的財産権は、特許申請もできず、かといってかような知的財産権が全く保護されないのもおかしいということで、不正競争防止法でカバーしていくというのですね。
 また、既存の法律が技術の進歩に追いついていかない場合に“取り急ぎ”の規制をしていくという意味で、ITの世界での不正競争行為が規制されています。例えば、不正競争防止法第2条第1項第10、11号で規制される「技術的制限手段回避装置提供行為」(技術的制限手段により視聴や記録、複製が制限されているコンテンツの視聴や記録、複製を可能にする(回避する)一定の装置又はプログラムを譲渡等する行為)や、第2条第1項第12号で規制される「ドメイン名の不正取得等の行為」(図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有またはそのドメイン名を使用する行為)があります。
 刑事罰についても現行の法律では処罰できないものを不正競争防止法で処罰規定を置いているのもあります。不正競争防止法18条には、「外国公務員等に対する贈賄の禁止」(外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して、営業上の不正の利益を得るために、贈賄することを禁止するもの)が規定されていますが、これは刑法における賄賂の罪の対象が日本国の公務員であることから、外国公務員に対する贈賄が刑法では処罰できないものがそれではおかしいというので、外国公務員に対する賄賂は“不正競争行為”ということで処罰されるというものです。賄賂することにより、契約が取れるというのは確かに不正競争行為でしょうね。

 ということで、コンプライアンス的観点で言えば、法の盲点をついても、その後不正競争防止法などで盲点が埋められていたということもありますので、くれぐれもご注意をくださいということでしょうか。
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