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携帯電話契約の拘束 |
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[携帯電話契約の拘束]2015.6.1
先日、S社と契約していた携帯電話を期間前に解約して、いわゆるMVNOである格安スマホのR社と契約をしました。携帯電話については、S社との契約時に購入していたのでその分の解約ペナルティはなかったのですが、通信契約自体の解約については、解約期間(今年の12月中ということでした。)外での解約ということで、解約ペナルティを約1万円徴収されることとなりました。まあ、格安スマホに切り替えることで通信費も約半分になりそうですし、機種本体もこれまで使用していた携帯電話の半分以下ですので、ペナルティの1万円もすぐ回収できそうですが、契約条項とおりとはいえ、もやもやとした気持ちになったのは確かです。
そもそも、私が使用していた携帯電話は、2年も使っていると一晩充電しても、ひどいときは翌日の午前中でバッテリーがアップしてしまい、機種変更せざるを得ないと考えていました。格安スマホが出てきたので、そこで、乗り換えようとS社ショップに行ったところ、解約期間を3か月徒過しているので、解約手数料がかかるというのです。契約後2年間は解約に制約があるのは知っていましたが、それ以降は自由に解約できるものと思っていたので、2年“毎”に更新され、やはりその期間の解約が制限されるというので、なんとも納得感が無いわけです。 そこで、裁判になったケースが無いものかとググっていましたら、うかつなことに昨年(平成26年)12月11日に、最高裁判所が、携帯契約2年縛りの違法性を争った上告受理の申し立てを棄却する決定を出していたのですね。どういう事件かというと、やはり私と同様の不満を持つNPO法人である消費者団体がメガキャリア3社を相手に、解約金は消費者の利益を侵害するとして訴えを提起した事件です。地裁レベルでは1勝2敗だったのですが、高裁レベル、すなわち控訴審で全て敗訴し、最高裁判所に上告を受理してほしいという申し立てをしていたのですが、それを棄却されたというのです。問題となったのは、2年間の中途で解約するときに解約金9500円をユーザーに課すことが消費者契約法9条に反するか、かような中途解約金が消費者の利益を一方的に害するとして消費者契約法10条に反するかという点でした。 まずは、消費者契約法という法律はなぜ制定されたかという趣旨から整理しますと、そもそも民法の世界では、契約をする両当事者は対等の関係であるというのが基本的な考えでした。しかしながら、例えば、圧倒的な資金力を有し、社内弁護士を含む豊富な法的スタッフを有している携帯メガキャリア3社と、携帯を利用する一ユーザーが対等の関係ということはありえません。ましてや、3社でほとんど寡占状態である我が国の携帯電話市場において、一個人が交渉をして有利な契約内容を勝ち取るなんてことはあり得ず、キャリア側の決めた契約内容(約款)を受諾しなければ携帯電話が使えないという状況です。かような巨大資本側と、一個人である消費者間の資金的、情報的、交渉力的格差を埋めようというのが消費者契約法の趣旨なのです。消費者契約法9条1号では、このように規定されています。 「次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
この点、控訴審において、高裁は、“平均的な損害の額”の算定を色々と解釈していましたが、結局は9500円という中途解約金は、事業者(メガキャリア)の解約に伴う平均的な損害の額を超えないと判断しました。どうやら、この訴訟の原告は、2年契約の半分程度経過した時点で、訴えを提起したようで1年分を残していた事案のようですから、まあどのような計算をしてもキャリアの方の損害の方が大きいと判断したようですね。しかしながら、2年契約で1年11か月経過した時点での中途解約でもやはり9500円の違約金が課される現状制度において、果たして制度全体に問題なしといえるかは疑問です。また、2年を経過して数か月が経過した場合の中途解約(私の場合ですが)についても同様に中途解約金9500円を徴収することについて、果たしてキャリアに中途解約による損害があるのか、2年間で十分元を取っているのではないかという疑問が払拭できません。 そこで、消費者契約法9条1号には違反しなくても、消費者の利益を一方的に害する条項として無効にならないか、包括的に消費者の利益を保護する消費者契約法10条に違反しないかという点も問題になりました。消費者契約法10条には、このように規定されています。 「民法 、商法 (明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項 に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。」 しかしながら、控訴審において、高裁(の一つの判決)は、ユーザーは、中途解約権が制限されている対価として、利用料金の割引を得ているから、一方的に害することはないという判断をして、同条も違反しないという判断をしています。しかし、そもそも中途解約権を制限されていない契約というものは、結局、利用料金が高額に設定されていることから、ユーザーはほとんど選択しないし(私のように知らなかった人もいるし)、そのような論理では、全く非合理的なとんでもない金額の基本契約を設定し、実質的にそのような基本契約を選択させないようにして、中途解約権を制限する契約に誘導することで、消費者契約法10条を潜脱しかねないようにも思えます。どうもそのあたりについて、高裁は杓子定規に条文適用するにとどまり、実質的な利益衡量をしていないきらいがあります。裁判官は、携帯をあまり使わないのでしょうかね。 そのような最高裁の決定が出て、メガキャリアが一安心かというと、さすがに監督官庁である総務省も現在の携帯通信市場のあり方をよしと思っているようではなく、まずこの5月からSIMロックの解除をメガキャリアに義務付けるようにガイドラインを改正しました。それでも、解除除外機種があったり、使用電波の関係で乗り換えられない通信会社があるとかいろいろ問題含みで、一気には欧米並みとはいかないでしょうが、まずはメガキャリア寡占打破の第一歩になるのではないでしょうか。2年縛り問題も、総務省は、問題ありとしてメガキャリアに是正していくようで、作業部会を設置したようですが、解約期間の延長や、初回契約後の無制限解約、解約料の低減など早く是正してほしいものです。 |
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