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「合同会社の設立3割増 ?」その真意を問う |
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[「合同会社の設立3割増 ?」その真意を問う]2012.5.1平成24年4月20日付の日経の記事で、「合同会社の設立3割増」という記事があった。法務省の調査では、2005年に3000件ほどの設立だったのが、2011年には9200社となり、1万件を超えるのではないかとの見込みもあるようだ。増加の理由として、同記事は、①立ち上げ時の費用、維持費用が安価であること、②経営の機動性に弾みがつくことを挙げている。 合同会社というのは、出資者自らが経営を行うことを前提としながら、その出資者の責任は出資額に止まるという有限責任の会社のことをいう。新会社法前は、出資者自ら経営を行う会社としては、合名会社・合資会社といういわゆる人的会社があったが、この場合、出資者は無限責任、すなわち合名会社・合資会社の財産で債務を弁済できないときは、出資者がどこまでも弁済の義務を負う。その対極にあるのは、いわゆる物的会社である株式会社(当時は有限会社の設立も認められていたが)であり、出資者が必ずしも経営を行うものでなく(所有と経営の分離)、また出資者は、その出資した額に責任が留まる(会社がつぶれても、出資金がパアになるだけで終わり。)という有限責任を採用している。合同会社というのは、その人的会社と物的会社のいいとこどりをした新しい会社形態であると言われた。すなわち、出資者自ら経営を行い、会社の債務に対する責任は有限責任であるというものである。出資者自ら経営を行うということは、会社の運営方法や配当についても、出資者同士で自由に制度設計ができるというものである。それを定款自治という言い方をすることもある。 まことに都合が好さそうな制度の上、合同会社導入においては、米国のLLC(Limited Liability Company)制度を参酌したものであるから、米国におけるパススルー課税制度も“当然に”認められるものと、経済界は合同会社制度に期待した。パススルー課税制度というのは、ひらたくいうと二重課税を回避する制度である。例えば、Aという会社が、100%子会社B社を設立し、B社が100という利益を出した場合、まずB社で法人税課税がなされ、さらに出資者であるA社に配当として送金すると、その配当にも課税されるという二重に課税されるものが、パススルー課税制度においては、B社レベルにおいて課税がされず、出資者A社においてのみ課税がなされるというものである。別の見方をすると、A社において損益通算ができるということになる。すなわち、A社の利益と、B社の損失を相殺することができるというものである。 しかしながら、合同会社にはパススルー課税制度は適用されなかった。税務当局にとっては、合同会社を利用した租税回避が濫用されると心配したのであろうか。そのあたり、合同会社に先行した有限責任事業組合(日本版、LLPといわれる。)制度においては、“一応”パススルー課税制度が認められているものの、組合における損失の出資者(組合員)における取り込みを出資額までに制限するといういささか中途半端な制度となっているところも、税務当局の意向の表れであろうか。もっとも、海外企業の日本法人については、当該出資者の課税国において、いささか中途半端なLLCであっても、パススルー課税を認めるようであるから、合同会社の設立は相次いだ。この日経記事でも米シスコシステムズの日本法人や、米ウオルマートの(公表されていないのでたぶん)100%出資する西友については、合同会社にしているのは、そのあたりに理由があるとする。 ということから、日本企業にとって、日本版LLP,LLCへの期待は一気にしぼみ、両制度はあまり利用されないのではないかといわれたのであるが、ここにきて合同会社の設立が増加していると聞いて驚いている。日本への投資が増えている訳でもないから、日本法人の合同会社化が増えているとも思えないことからすると、やはり設立時に費用の問題であろうか。株式会社よりも登録免許税が安かったり、定款の認証が不要であったり、さらに電子定款を利用すれば収入印紙もはらなくていいと、トータルの設立コストが安くなるので、「株式会社という名前でないと信用がないのでは」と思う人以外で、会社法人が必要という人(たとえば、介護事業では個人事業ではだめの様である。)には、使い勝手がいいのかもしれない。また、行政書士らが株式会社でなくとも合同会社の設立を勧める(何か、最近の薬局でジュネリック薬品を勧めるのと似ているかもしれない)のも増加の理由かもしれない。このあたり、裏事情に詳しい人がいれば話しを聞きたいものである。 オチではないのだが、確か合同会社、有限責任事業組合の税務については、ある程度導入から期間が経過したら見直しをするということになっていたはずだが、このあたりも、グローバル・スタンダードに制度を近づけていくことを政府も真剣に考えるべきではなかろうか。 |
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