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パナマ文書とお金の歴史(その1)

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[パナマ文書とお金の歴史(その1)]2016.5.1

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 パナマ所在の法律事務所から、膨大な量(1150万件)の機密文書がドイツの地方紙に持ち込まれ、多くのジャーナリストの分析を経て、その一部が今回公開されましたが、その内容に、世界中が衝撃を受けています。というのも、多くの国家首脳・著名人自身もしくはその親族・友人たちの名義で、パナマをはじめ、ケイマン諸島、ブリティッシュ・バージン諸島などのいわゆるタックスヘイブンに、実体のない資産だけを保有することだけを目的とするペーパーカンパニーを所有していることが判明したからです。余談になりますが、1990年頃、パナマシティに出張したことがありますが、今回ニュース映像で映る高層ビル群などはまだなく、どちらかといえばのんびりした雰囲気の街だったという記憶です。折角ですので、パナマ運河も見学に行きました。パナマ運河を通行できる船の幅は最大32.3mであり、実際に閘門を見ますとせいぜいプールを大きくした感じの水門であり、ぎりぎりのところを船が通過しているので、機関車が横から船が運河の岸壁にぶつからないようにロープで引き上げていました。また、ケイマン諸島のグランドケイマンにダイビングをしに旅行に行きましたが、確かに街中には、銀行だらけで、といっても、一つの建物の中に、いくつも銀行が寄合所帯で入っているという感じで、建物の玄関先にずらっといくつもの銀行名や、会社名のネームプレートが掲出されていたのが印象的でした。

 タックス・ヘイブンに会社を設立すること自体は違法ではなく、また、その会社が資産を保有することのみを取り上げて違法というわけでもありませんが、パナマ自体が何故タックス・ヘイブンになったかというと(またまた余談になりますが、昔はタックス・ヘブン(heaven)と言われていましたが、さすがに課税ゼロの“天国”というわけではなく、最近は、租税回避地の意味のタックスヘイブン(haven)という呼称が定着しています。)、船舶の便宜置籍船登録で稼いでいたことがきっかけです。
 便宜置籍船というのは、日本に限らず、どこの国でも船を当該国に登録すると登録税など種々の税金がかかります。また、当該国籍の船員乗船を義務付けたりします。そこで、パナマや、リベリアなどの国は、それらの税金、乗員規制などを軽減もしくは免除する船舶登録制度(便宜置籍船制度)を創設し、登録料を徴収することで一種のビジネスとしたのです。言ってみれば、日本や、アメリカなどで掛かる税金や労務対策を回避するという意味で、タックス・ヘイブンの原型なのですね。昔、パナマ船籍の船舶とか、リベリア船籍の船舶という報道があった時に、パナマとかリベリアというのは金持ちの国なのかと思っていたら、結局こういう仕組みだったのですね。リベリアは、アフリカでも最貧国のカテゴリーに入るのに、不思議に思っていました。便宜置籍船制度に味をしめたのか、パナマは、船舶だけでなく、金融の面でも“便宜置籍”を拡大し、現在においては、タックス・ヘイブンとなったということです。今回、大量の内部文書が流出した法律事務所モサック・フォンセカは、色々なタックス・ヘイブンの税制を研究し、どこに会社を作って、どのような資産を保有させるのが有利かということを、顧客にアドバイスして、ペーパー・カンパニーを作ってあげることを業としていたのです。

 問題なのは、そのようなタックス・ヘイブンを悪用する人がいるからです。タックス・ヘイブン国に会社を設立し、預金、株式や、船舶などの資産を保有すること自体は違法でなく、当該ペーパーカンパニーを保有する者の居住国においてきちんと申告すれば問題ないのです。日本においても、タックス・ベイブンなどの法人において発生した利益については、日本における発生利益とみなして法人税・所得税を申告するというタックス・ヘイブン税制が確立しています。ところが、タックス・ヘイブンにある法人などの実態は課税国においてはなかなか把握できないのが実情ですから、税務当局に黙っておればわからないだろうという輩が後を絶たないということなのですね。はたして、プーチン大統領の友人はロシア本国で税務申告をしていたのでしょうか、キャメロン首相の亡父は英国できちんと税務申告していたのでしょうか(していたとしたら、失礼を謝罪します。サウジアラビアの国王は、どのみち国自体がサウジ家のものですから、税務申告という概念すらないのかもしれませんが。)。アイスランドの首相は、もはや言い逃れができないと観念して辞職してしまいましたし、タックス・ヘイブン税制を強化しようと旗降っていたキャメロン首相は、さすがにシャレにならず、EU残留問題についても立場がなくなってしまい、結局辞任せざるを得ないのではないでしょうか。
 今回余談が多くなり、本論については、次月その2でお話しさせて頂きます。
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