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日本の歴史はタテマエとホンネの歴史 |
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[日本の歴史はタテマエとホンネの歴史]2017.12.1
今回の衆議院総選挙においては、希望の党の自滅による自民党の圧勝により、与党が衆議院での総議員の3分の2以上の議席を確保したことで、いよいよ安倍首相は、岸信介の悲願であった憲法改正に着手するのではないかと言われています。首相の提案というのは、憲法9条1項の戦争放棄と同2項の戦力不保持はそのまま残して、新たに自衛隊の存在を明記する3項を付け加えるというものです。これは、なかなか戦略的には面白い考えともいえます。すなわち、9条改正反対論者の多くは、現在の1項、2項を一文字でも変えることはまかりならんというものですが、その人たちにそれでは自衛隊という組織が防災など国民の生命身体財産を守ってきた存在として否定するのですかというと、いやそうではない回答になると思います。そこで、安倍首相は、国民が国民投票でも抵抗がないように、3項を追加して、自衛隊を(多分)自衛権を行使する組織としてまずは認知させようというものなのでしょう。
もちろん、自衛力と戦力はどう違うのかという議論は当然出てきましょうし、何よりも従来の自民党草案では、「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と国防軍すなわち軍隊の創設を明記していたのですから、自民党党内での反発が当然出てくるかと思います。しかしながら、国民に対するアピールとしては、「国防軍」というアレルギーを起こしかねない用語を用いず、現行の組織を追認するだけなのですから。 安倍首相の心の中を“忖度”するに、まずは憲法改正を1回既成事実化しよう、一回やってみよう、それには国民がアレルギーを起こさないこれならだれでも賛成票を投じざるを得ない改正案にしよう、国防軍にするのは、その次の改正でいいということではないでしょうか。あまりにもタテマエにこだわりすぎると、日本国民の性格からすれば通るものも通らなくなる。ホンネのところを既成事実化するのがいいということをだれか(歴史学者?)がアドバイスしたかもしれません。 日本の歴史というのは、タテマエとホンネの歴史でした。701年に制定された大宝律令により、日本は律令という基本法により運営される国家となったのですが、すぐに藤原氏や大寺社による荘園制度により、律令体制が骨抜きにされていき、律令体制に反発する勢力としての武士による鎌倉幕府成立により、朝廷が支配する国家範囲は限りなく狭められ、室町時代に至り応仁の乱により、朝廷が支配する領土が全くと言って無くなり、朝廷の政治勢力というのはゼロに等しいものになりました。しかしながら、多くの方が聞いて驚くのは、律令体制というのは、何と明治維新まで1100年以上“形式として”継続したのです。すなわち、源頼朝は、天皇制を廃止したのではなく、天皇から征夷大将軍という軍事上の地位に任ぜられた上で実質的な国内政治を行うこととしたのですから、律令体制と言わば併存したのです。それは室町幕府でも、江戸幕府でも同様でした。形骸化した朝廷から、将軍という地位を与えられて政治を行うというそれこそ海外の中国王朝や、ヨーロッパの王朝からすればあり得ないタテマエとホンネの政治を行うことに国民が何ら疑問を感じなかった証拠です。 海外の王朝交代では、前王朝の支配者は根絶されるのが常です。これは、朝廷と幕府との関係にとどまりません。鎌倉幕府においては、源氏の将軍はたったの3代(源頼朝、源頼家、源実朝)で終わってしまいましたが、源氏の地が絶えた後は、京都から九条家や皇族から将軍を招聘し、あくまでお飾りとしての地位につけ、実際の政治は北条家が執権として鎌倉幕府滅亡まで仕切ったということからもいえます。すなわち、鎌倉時代の国民(この場合政治に参加するという意味で武士ですが)は、タテマエとホンネが食い違っていても実際の政治さえが回っていれば、気にしないということだったと言えると思います。だからこそ鎌倉幕府は、150年近く存続し、その間に元寇という国難にあっても北条得宗家と一致団結し、乗り切ることができたのだと思います。なによりも、鎌倉幕府滅亡後に、後醍醐天皇がタテマエとホンネを一致させる、すなわち天皇直々政治を行うという建武の親政を始めましたがわずか3年で崩壊してしまったことが、日本においては無理に建前と本音を一致させることのむずかしさを実証していると思います。 日本人という民族は、太古の昔から極端に建前を主張することも、かと言ってズブズブに本音だけの無秩序な社会になることも嫌う民族で、政治が安定するのであればタテマエとホンネにかい離があっても気にしない民族なのだと思います。だからこそ、戦後警察予備隊ができ(その時点で警察の一種というタテマエとホンネを分けた便法を使っているわけですが)、保安隊となり、現在の自衛隊となり、国民としては経済成長して生活が良くなれば、自衛隊が実際は戦力なのか自衛力なのかにこだわることはなかったということです。だからこそ今回の安倍首相の改正案は“狡猾”ともいえると思うのです。「今回の改正は、単に国民の皆さんがタテマエとホンネのかい離を認めていたことを追認して頂くことに過ぎませんよ。」と言っているように思えるのは私だけでしょうか。 (参照)日本国憲法第9条
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