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[日大アメフト部事件]2018.7.1

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 この事件については、連日、ニュースでも報道され、また日本大学の対応が一般人の目から見ても「人のうわさも75日」的であり、言いたい奴には言わせておけという姿勢が非常にバッシングを受けており、他にも問題点満載の事件ですが、2,3、個人的に思ったことをコラム的に書いてみます。

 まず、日本大学という組織のガバナンスの問題です。一般人から見えにくいのは、大塚吉兵衛という“学長”という大学を代表するような肩書きの人が記者会見をしたにも拘らず、何処か“私には責任権限がありませんよ”のような、言葉にはしないが態度に無責任感が現れているのはなぜかということではないでしょうか。また、マスメディアも大塚学長ではダメだ、田中英壽理事長が表に出て弁明しろという論調なのが一般人には理解できにくいところなのではないでしょうか。
 このあたり、株式会社であれば、代表取締役という人がいて、通常は社長といわれている人が会社の代表者で代表権限を持っているということで組織のガバナンスがわかりやすいのですが、株式会社以外の法人、例えば日本大学のような学校法人や、お寺や神社などの宗教法人、病院などの医療法人については、今一つ“誰が一番偉いのか”というのが見えにくいといえます。もう10年以上も前になりますが、寺社仏閣関係の建築業者の再生事件において、“得意先”であるお寺を何件か訪問したのですが、その時驚いたのは、住職という肩書の人と寺社仏閣の新築修繕の話をしても「私には、重要事項についての決裁・代表権限がないので、檀家総代と話してください。」と言われたことです。なるほど、病院においても院長が理事長も兼ねているような個人病院であれば院長が“一番偉い”ということになりましょうが、色々な病院でも経営面のトップである理事長先生と医療面のトップである院長先生とに分かれているというケースは多いですね。
 日本大学においても、学長は“教学”関係のトップであり、経営面のトップである田中英壽理事長とは機能分化しているということです。しかしながら、田中英壽理事長には、教授経験もなく、幾ら教学のトップと経営のトップとは機能が違うとはいえ、教育機関である大学のトップとして、理事長に教授経験者が就任していないことに違和感を感じるのです。また、部活動をも統括する「学長」が理事会においては平理事であり、本来統括されるべき部活動の監督である内田正人氏が常務理事というのは、それでは部下が上司をコントロールするようなものであり、やはりガバナンス的におかしいのではと感じた次第です。そのことは、医療法人でも同じではないかと思います。幾ら経営のトップと医療のトップが違ってもいいと言っても、経営のトップが全く医療の内実を知らないようでは、仁術としての医療を求めることができず、金もうけ優先の医療となってしまわないでしょうか。日本大学は以前は、経営・教学両方を見る「総長制」が取られていたのが、田中英壽氏により、総長をいわば格下げし「学長」にして、自らが独裁者になってしまったと言われても仕方が無いように思われます。このあたり、今回の問題をきっかけとして日本大学という学校法人のガバナンスを改革するチャンスとなることを外野としては期待しているのですが。

 もう一つは、やはり今回の違法タックル事件の真相究明及びそれに基づく責任追及です。この点、内田正人氏は最後まで自分のなした行為についての責任を認めることなく、アメフト部の監督、学校法人の常務理事を辞任するということになりましたが、大学側では第三者委員会を設置し、大学とは一切利害関係のない弁護士を委員長、委員長の選任する委員とすることで構成したとのことです。日本弁護士連合会が定める「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に則っているとのことですから、日本大学の顧問弁護士は排除されていることと思いますので、公平公正な社会正義の観点から、真相究明がなされることを期待したいと思います。
 真相究明につきましては、関東学生アメリカンフットボール連盟が、内田正人氏と、井上奨コーチの除名処分を決定した臨時理事会の記者会見を全文読みましたが、なかなかよくできていると感じました。特に事実認定のところについては、加害者選手の主張、監督・コーチの主張に付いて、両者の主張が合致しないところを争点として3つ設定し、それぞれについて、多数の関係者からの聞き取り、および加害行為の場面の録画を丁寧に分析して、一般人としての経験則、アメリカンフットボール“業界”の常識を適用して、適切に事実認定しているところは評価されるものと思います。実際、事実認定などの過程には、学連の弁護士が関与しているということで、相当裁判における事実認定の手法が適用されています。日本大学の第三者委員会がどこまで掘り下げて事実認定していくのか、学連の処分決定における事実認定を全く無視するわけにはいかないと思います。それほど、学連の処分決定は重みがあると言わざるを得ないでしょう。

 最後に思ったのは、どの様な組織でも長い間独裁がつづくと組織が腐るということではないでしょうか。日本での最大の組織である政府においても、最高責任者らが、内田正人氏のように「自分から指示を出したことはない。」と言い続け、部下が自殺しようとも、公職を追われようとも何らの痛痒も感じない。嵐が過ぎるのをひたすら待つというのであれば、森友問題、加計問題についても、関東学連のような“一般人の経験則”に基づく公平公正な真相究明をしてもらいたいと思った次第です。
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