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[外国人労働者問題]2018.12.1

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 政府は、11月2日、条件によっては永住権の取得に道を開く外国人の単純労働者の受け入れを認める内容の出入国管理法の改正案を閣議決定しました。確かに、現状の日本を見れば労働力不足は顕著ではないかと思われますので、労働力の受け入れは喫緊の課題でしょう。安倍首相は、労働力の受け入れであり移民政策ではない」と説明していますが、与党野党からも「事実上移民の受け入れに舵を切ったのではないか」という批判が上がっています。改正案の何処が「移民ではないか」というと、「熟練した技能」をもつ特定技能2号の外国人労働者については、滞在期間に上限はなく、家族同伴も認められ、さらには、10年日本国内に滞在すれば永住権の取得要件の一つを満たすということになるというところです。確かにこれでは短期間の労働者の一時的受入とは言えないことになりそうです。
 同じころ、ドイツにおいて、メルケル首相が与党CDUの党首を退任すると表明しました。相次ぐ州議会選挙でのCDU敗北の責任を事実上取る形になるというもので、12月の党大会に立候補しないこととなります(日本と違って不思議と言えば不思議ですが、首相職については2021年の首相任期満了まで務めるとのことです。)。ヘッセン州、バイエルン州などでのCDU敗北の原因として言われているのが、メルケル首相の移民・難民政策です。メルケル首相は、2015年の中東からの難民問題勃発時に、ドイツとして100万人の移民受け入れを表明したのですが、この政策が国内で大批判を浴びているというものです。
 このメルケル首相辞任が、今回の出入国管理法改正の将来を示唆しているのではないかと思うのです。シリアからの大量の難民問題が起こるまでは、欧米各国も表立って移民・難民を拒絶する空気はなかったのですが、あまりに多量の難民が欧米各国に押し寄せたために、その国内における外国人との共存についての“閾値(いきち)”を超えてしまったがために、欧米各国が、移民・難民受入規制を強化してしまったのだと思います。閾値というのは、大辞林で引くと「@一般に反応その他の現象を起こさせるために加えなければならない最小のエネルギーの値。A生体に興奮を引き起こさせるのに必要な最小の刺激の強さの値。」と説明されていますが、私流に簡単に言うと、例えば虫歯である時点までは何か違和感がするなというのが、あるハードルを越えると途端に痛みが出て症状として強く認識し出すという、そのハードルを閾値というものだと思います。中東難民問題が起きるまでは、少数の欧米以外からの移民・難民が存在したにも拘らず、欧米各国国民にしてみれば閾値以下であったので、違和感も出ず問題視もされなかったのが、大量の難民が流入してしまったがために、各国国民の閾値を超えてしまって、虫歯の痛み並の拒絶症状が出てしまったのだと思います。その症状が引き起こした副作用としては、欧米各国の極右政党の台頭が挙げられると思います。きつい言い方をすれば、メルケル首相の難民・移民受け入れに関する閾値(確かに8000万人の人口に100万人とは閾値としては高いような)が、ドイツ国民よりも高く、既にドイツ国民が閾値を超えて拒絶感が出ているのに、メルケル首相は虫歯の痛みも出ないというところが問題だったのではないでしょうか。
 翻って我が国です。外国人が極端に少なかった我が国において外国人は“ガイジンさん”というもの珍しさで、国民の閾値以下で何ら問題が起きなかったのですが、これが、出入国管理法改正がなされて多量の外国人が長期間在住を前提として流入してきた場合に、果たして日本人の閾値を超えないかということが問題となりうると思います。司馬遼太郎は、「日本人は一尺掘ると攘夷の思想が噴出する。」というのが日本国民の性格だと述べていますが、幕末開国後、外国人に対する加害行為がなされたことなどを考えると、幕末開国時外国人に対する閾値がゼロに等しいほど低かったレベルから、現在は多少上がっているとはいえ、欧米各国の閾値レベルまで高いとは言えないでしょう。安倍首相の強力な支持団体である日本会議も移民反対の姿勢を鮮明にしていますが、彼らの閾値は相当低いのではないかと思います。特に懸念されるのが、外形上日本国民と違った風習を持った外国人、端的に言えばイスラム系の人が大量に入ってきた場合、閾値の低い人たちと問題が起きるのではないかと心配されます。実際、閾値が高いと思われていたフランスにおいても、2004年に制定された公立学校におけるヒジャーブ(スカーフ)禁止の法律に続き、2011年4月から、公共の場で顔を覆うブルカを着用することを禁止する法律が施行されています。よもや、日本会議の面々も日本刀で天誅ということはないにしても、種々のコンフリクトが起きうるような可能性は否めないのではないでしょうか。メルケル首相辞任と、出入国管理法改正の二つのニュースに接して思った次第です。
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