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[成年後見人には親族を]2019.4.1

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 最高裁判所が、3月18日、開かれた成年後見制度の利用促進をはかる国の専門家会議で、成年後見人には「身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示しました。成年後見制度とは、認知症などで意思能力が減退した人、事故などで植物人間になってしまい意思能力がなくなってしまった人(「被成年後見人」と言います。)の財産管理、療養看護を行うための後見者として成年後見人を選任し、その任に当たらせるという制度です。その昔は、「禁治産制度」「禁治産者」というおどろおどろしいネーミングでしたが、政府としては、意思能力が減退した高齢者が増加したことから、成年後見制度を活用してもらうためにネーミングを成年後見制度と柔らかくしたものです。

 制度開始当初は、被成年後見人の親族、例えば配偶者とか、子供が成年後見になる事例が多かったのですが、後見人になった家族の不正などにより、被成年後見人の財産が費消されるなどの事案が出てきましたので、弁護士、司法書士ら専門職の選任が増え、現在では親族が被成年後見人に就任する割合は約3割程度までになっていました。しかし今回、最高裁判所が示した考え方により、この傾向が大きく変わる可能性が出てきまして、実際、最高裁判所は、成年後見制度を取り扱う全国の家庭裁判所に、その旨の指示を出しているとのことです。

 それでは、今回何故最高裁が「成年後見には親族を」という考え方を示したのでしょうか。最高裁判所は、成年後見制度が前の制度である「禁治産制度」の趣旨である禁治産者の財産を適切に管理するということを重視していたと思われます。禁治産というのは、禁治産者が、意思能力が喪失・減退しているために、財産を治める(管理する)ことができないので、それを禁ずるということからきています。だからこそ、弁護士などの公平公正な第三者に被成年後見人の財産を適切に管理させるのがベターと考えて、専門職後見人を増やしてきたと思われるのです。しかしながら、(同じ弁護士として恥ずかしいことですが)専門職後見人にも不正を働いて、被成年後見人の財産を食い物にする者が少なからず出てきました。最高裁も、成年後見人としての不正の可能性については、親族であろうが、専門職後見人であろうがどっちもどっちということで、それよりも不正を行わせないように今までのような性善説ではなく、性悪説にある程度たって成年後見人を監督する後見監督人の制度をもっと活用するということで、この問題を解決しようとしています。何よりも、昔の「禁治産制度」はその名前のとおり、財産管理に主たる価値を置いていたので、そうだとすると財産が無い意思無能力者には、後見人を置く必要が無いということになってしまいますが、現在の成年後見制度は上述したように、被成年後見人の財産管理と共に、療養看護が適切に行われることを期待するものです。最高裁判所は、財産がなくとも療養看護が必要な意思無能力者のために「成年後見制度」があることを改めて重視し直して、療養看護の面倒をみるのに赤の他人の専門職貢献にではなく、長年家族であった親族を成年後見人にすることがやはり適切であると判断したのではないかと思われます。

 また、専門職後見人を付けるとなると、専門職後見人に対する報酬を支払う必要が出てきます。大体、月当たり2−5万円の後見人報酬を支払うということになり、いくら被成年後見人の財産の中から支払われると言っても、回り回って親族の相当の負担となってしまうことは容易に想像できることで、そのために成年後見制度が活用されないという面も否定できないでしょう。

 最高裁判所としては、より多くの意思能力喪失・減退者に成年後見制度を利用してもらいたいということで、今回の方針を変更したものと思われ、今後は、財産が多い被成年後見人には専門職後見人を付けて、圧倒的多数である通常の(あまりお金のない)被成年後見人には親族を成年後見人にするという振りわけの運用がなされていくものと思われます。
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