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イオンとビール不当廉売問題 |
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[イオンとビール不当廉売問題]2012.9.17月23日付の日経でも報道されていたが、ビール卸売3社がイオンに対して、原価よりも安い価格でビール類を卸売りしていたとして、公正取引委員会が、卸売3社に対しては独占禁止法(不当廉売)違反で警告を、イオンに対しては“適正な価格での取引に応じるよう”後日文書で通知するとのことであった。 この問題は、どうやらイオン周辺の一部小売店から公取委に対して“タレこみ”があったのが契機の様であるが、2005年にビール販売各社が“過剰な安売り”を是正するために数量リベート制度を廃止し、価格是正を図ったが、イオンだけが価格是正に応じなかったというのが遠因とのことである。イオンが価格是正に応じないことについては、公取委は、独占禁止法(優越的地位の濫用)違反ということで調査していたものの、結局、違反の嫌疑なしということで結論が出されている。今回の公取委のイオンに対する“後日の文書での通知”は、優越的地位の濫用で摘発できなかったことに対する意趣返しのような感じがするのは私だけであろうか。 この記事を読んで、公取委も無理があるなと思ったのは、「イオンがビール卸売会社に対する優越的地位と言えるのか」「イオンが卸売各社の不当廉売の共犯といえるのか」の点である。 まず、イオンの優越的地位の濫用の問題であるが、独占禁止法2条9項5号ハにおいては、 「5.自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。 ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。」を禁止している。形式的には“その額を減じ”か”取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し“に該当するが、はたして、イオンは優越的地位にあるのであろうか。その基準は、平成22年11月30日付の公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」に示されており(固有名詞を入れ込んで読むと)、①卸売会社のイオンに対する取引依存度、②イオンの市場における地位、③卸売各社にとっての取引先変更の可能性、④その他イオンと取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮して判断されるとなっている。 それでは、不当廉売の問題ではどうか、イオンは不当廉売をした卸売各社の片棒を担いだ共犯と言えるのであろうか。独占禁止法2条9項3号では、次の通り、不当廉売を禁止している。 「3.正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」 不当廉売の価格とは、「商品をその供給に要する費用(総販売原価)を著しく下回る対価」ということで、総販売原価とは、製造原価に販売費および一般管理費を加えたものとのことである。しかしながら、メーカーであろうが、卸売会社であろうが、製造原価(卸売会社で言えば仕入れ値)はもちろん、販売費、一般管理費を、ビールの銘柄毎に、イオンに示しながら交渉をしたとはとても考えられない。リベート制度を廃止してまで過剰な安売りを廃止しようと考えるビール・メーカーが、卸売会社に対しても、その様な機密情報を販売店側に幾らでも開示してもよいというとはとても考えられない。イオンとしてみれば、そもそも「商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価」を認識して取引していなかった可能性があり、そうだとすれば、法令違反の事実の認識がなかったことになり、また、卸売会社との共謀もないであろうから、独禁法違反を問うのは難しいであろうから、せいぜい、公取委からの“後日の通知”に止まるしかないのであろう。実際“後日“通知は発信されたのであろうか。イオン側も相当反発しており、公取委担当者から優越的地位の濫用を認める文書にサインしろと迫られたとか、原価割れしているのであれば、原価を明らかにしろと主張しているが、むべなるかなという感じである。 公取委が小規模の小売店舗の味方を任じたいがためにこのような対応をしているとしたら、ビールを愛用する一般消費者の利益を保護する観点が疎んじられていないかと思われる。公正公平な競争を実現して、最終的に保護されるのは、一般消費者であるという独占禁止法の趣旨に今一度立ち返って考える問題ではなかろうか。 |
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