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[ソフトバンクの税務戦略]2019.9.1
最近のソフトバンクグループ(SBG)に関するニュースで、(アスクルの取締役をめぐるすったもんだを除くと、)同グループの税務申告に関わるものが2件ありました。一つは、2018年3月期の所得に関わる問題で、SBGが16年に買収した英国アーム・ホールディング(ARM)株の一部をグループ内のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)に移した際の税務処理に関わる問題です。もう一つは、今期(2019年3月期)の税務申告に関わる問題で、SBGの直接子会社であったヤフーを、SBGの子会社である国内通信事業会社であるソフトバンク(SB)の子会社とする、すなわちヤフーをSBGの孫会社とする組織再編に関わる税務処理問題です。
ARM株式移転問題とは、SBGが、16年に3.3兆円で買収した英国半導体設計大手ARM社の株式の一部を、2018年3月期中に、グループ内のSVFに現物出資で移管したのですが、税務上、株式移管に伴って1.4兆円に上る欠損金が発生したということで、この期は、SBG単体で2046億円の純利益を出していたものの、この莫大な欠損金を処理したので、1円も法人税を支払っていないというものです。それどころか、1.2兆円にも上る繰越欠損金を今後10年間、費用として所得から差し引くことができるのです。どうしてこのような欠損金が生じたかというと、SBGがARM社の株式を買収したときに取得価格と、SBGからSVFへの株式移管時の譲渡価格との差額が1.4兆円となったというものです。ARM社が上場しておれば市場価格で譲渡価格を算定できたのでしょうが、SBGがARM社を買収した後に、ARM社が非上場となったので、譲渡価格が非常に見えにくくなったためと考えられます。しかしながら、ARM株式の譲渡先であるSVFも、SBGが実質的に支配権を有している組織ですので、外野からすると、SBG−SVFとの間で譲渡価格を恣意的に設定して、出来る限り欠損が出るような操作をして租税回避したのではないかと思われてしまうところもあるのでしょうか。 今回の問題について、国税当局は、申告時期のずれによる修正申告をさせたものの、欠損金自体については「適正」という判断をしましたので、譲渡価格についても適正と判断されたものと思われます。SBGのもう一つのヤフーの組織再編による税務処理については、話が長くなりますので詳細を述べるのを割愛させて頂きますが、やはりこれもSBGとしての租税回避行為であるといえましょう。 租税回避行為というのは、「私法上の形成可能性を異常または変則的な態様で利用すること(濫用)によって、通常用いられる法形式に対応する税負担の軽減または排除を図る行為」と定義されます。脱税とは違い、租税回避行為は、あくまでも私法上は有効な取引を行って、課税要件に該当することを逃れるというものです。我が国の現行税法上、このような租税回避行為を否認する包括的・原則的な一般規定はありません。例外的な一般的否認規定(GAAR)として同族会社の行為又は計算の否認を規律する法人税法132条等があるのみです。そこで、税務当局として、GAARの導入(欧米諸国で導入事例があるとのこと)を考えたくなるのですが、一番の問題は、日本国憲法第84条において、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と、明確に租税法律主義を規定していることです。租税の徴収は、国民の財産権に対する制約になるので、歴史的にも国家権力と国民の間で摩擦が生じることが多かったので、課税の手続として議会の承認を前提とする制度が設けられることが租税法律主義の趣旨なのです。もし、GAARを法人税法に規定するとすると「経済合理性が無い節税のためだけの取引」が規制されることとなるでしょうが、果たしてこの文言だけでどのような取引が規制されるのか、納税者にとっての行動予測可能性が担保できないのではないかと思われます。 今回のSBGの2つの租税回避行為については、どうやらグレイながらも課税を突破することとなるようですが、一般納税者からみると何とも納得がいかない感がぬぐいきれないところもあるのではないでしょうか。同時期のニュースでは、SBGは、2019年4−6月期の連結決算において最終利益が1.1兆円にも達するとの報道がありました。やはり、経済活動をしている土地において、適正なる法人税を納税することが法人としての会社としての社会的使命ではないかと考えるのですが、皆さんいかがお考えになりますでしょうか。 |
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