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最近の解決事例紹介(不動産編)− 土地通行権に絡んだ土地売買事例 2015.7.15

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 当事務所の顧客からご紹介を受けた案件ですが、都内に土地と建物を所有されている方から、土地通行権についてのご相談を受けました。相談者の土地建物は、現在アパートとして賃貸していますが、公道から引っ込んだところにあり、複数の隣地所有者が所有する私道を今まで無償で通行してきたのですが、一人の隣地所有者から、今後通行権を認めないという突然の通知が来て困惑しているというものでした。正確に言うと、隣地所有者の代理人と称する不動産業者からのものでした。

 確かに、過去に文書などによる通行権設定などはしていないものの数十年もの間、何ら通行(歩行のみで自動車の通行はしていない)してきたことにクレームなど受けていなかったので、唐突感がありました。何よりも、相談者の土地は、公道に出るには、物理的に今まで通行してきた隣地所有者らの土地を通行せざるを得ず、通行権が否定されると“陸の孤島”となってしまいます。万が一、合意による通行権が認められないとしても、民法上の囲繞地通行権が認められる可能性は十分あると思われる事例です。裁判となったとしても、裁判所も現状を否定するには相当勇気がいるのではないかと思う次第です。
 そこで、当事務所から内容証明を隣地所有者に送り、話し合いを求めたところ、大手施工業者から当事務所にコンタクトがありました。相談者に通知を送ってきた不動産業者とは別の会社からのコンタクトでしたのでいぶかしく思いながらも面談してみますと、その大手施工業者の説明によると、隣地所有者は、何も通行権を認めないということを主張して事を大きくしたいのではなく、できれば相談者の土地を購入したいというものでした。
 通行権云々というのは、隣地所有者が相談した不動産業者が勝手に言い出したものであり、隣地所有者の真意ではないということが理解できましたので、相談者とも協議し、売買価格に折り合いがつくのであればということで当該土地の売買交渉となったものです。
 幸いなことというか、相談者の土地上の建物であるアパートには、複数の賃借人が居住していましたが、いずれの賃借人との契約も定期借家契約でしたので、数年以内には期限が到来するもので、買主候補である隣地所有者にとっても立退料などを考慮することなく、オーナーチェンジとして買い受けることができるものでした。立退料が不要ということですから、その分売買価格が減額されることなく、売主候補である相談者にとっても有利となったわけです。結局、他の不動産業者に査定などをしてもらい、相談者として納得のできる金額で売買金額についても合意に至り、売買契約締結と同時に決済し、無事解決したという次第です。
 本事例からも学べることとしては、やはり、賃貸物件は定期借家にしておくと、何かあった時も機動的に当該建物を処分できるということでしょうか。本事例も、もし普通借家契約でしたら、とても短期間に解決できなかったことでしょうし、相当な立退料を賃借人側から要求され、その分が売買価格の減額要因となったでしょうから、やはり、建物オーナーとしては、賃貸する場合は、まずは定期借家での可能性を追求すべきかと思います。本事例では、相談者が管理を任せていた地元の不動産業者が、配慮して定期借家としていたものでした。
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