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最近の解決事例紹介(不動産編)− 建築士に対する契約解除請求 2016.10.1
当事務所が懇意にしている建築士の先生から、契約解除問題で相談を受けました。その内容とは、同先生が、建築設計の業務委託契約を締結している施主から突然契約を解除したいという申し入れがあり、それまでに施主が支払った契約代金を全額返還してほしいと言われているということでした。それまでは、施主との間が良好な関係だったので、突然解除と言われて同先生も困惑と共にショックを受けているとのことでした。
同契約の内容をチェックしたところ、代金の支払は、建築設計業務の各段階を越える毎に支払われるということになっていましたが、(施主との関係が良好だったためか)施主が「建築確認取得時金」までを先行して支払っていました。施主は、その前払金も含めてそれまでに支払った代金を返還してほしいと言ってきたものです。とはいえ、「基本設計完了時金」などは、基本設計書類なども既に施主に引き渡しているので、返還する義務はないと思われましたし、「建築確認取得時金」についても既に検査機関に建築確認の申請はしているので、その確認を待つだけとなっていたものですから、建築士の先生としては、返還するものはないというスタンスでした。 そこで、当方から、先方の施主代理人弁護士に対して、契約解除の申し入れは了承しましたが、既に頂いている代金について受任者として行うべき行為は完了しているので返還するものはないという回答をしたところ、先方からは東京地方裁判所に契約解除に基づく代金返還請求訴訟を提起してきました。東京地裁において、建築瑕疵事件については専門部である民事第22部が担当しているのですが、本事件については、いわゆる専門部でない通常部に配転されました。しかしながら、裁判が進むにあたり、やはりどの程度の建築士としての業務を遂行したかという査定が必要となり、通常部の事件ではありますが、裁判所の選任する(多分、専門部の民事第22部に登録されている建築士から選任を受けたものと思われますが)建築士を専門委員として、審理の進行に適宜意見を述べて頂くという立場で関与してもらうこととなりました。 この事件での争点は、上述したとおり、「建築確認取得時金」を受領できるまでの建築士としての業務が完了しているかどうかとなり、裁判官、建築士専門委員において検討してもらった結果、建築確認取得時金というからには、やはり正式に建築確認が下りていないと同代金の発生条件は満たしていないのではないか、しかしながら、建築確認申請は行っていることは確かであり、その行った建築士としての業務について全くのゼロ査定というのも公平を欠くと思われるということで、結局、「建築確認取得時金」については全額とはいかないもののある程度の額の支払を認めることとし、すなわちその差額については建築士から施主に返還するということで和解が成立しました。 やはり、今回の事件においては、建築確認業務についてどの程度まで建築士としての業務を遂行したかといういわば“出来高”について、建築士専門委員の専門的知見が重みを持ち、原告被告両者ともその知見を尊重したことによって和解ができたものと思われました。従い、今後かような事件で専門部に配転されない事件だったとしても、早い段階から専門職の関与(専門委員であったり、調停委員であったり)を求めることは重要であると思った次第です。 |
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