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当社には、顧問弁護士がいるのですが、セカンドオピニオンをとることは、顧問弁護士に対し、失礼になりませんか。


結論から申しますと、決して失礼には当たらず、そのような心配は御無用です。
顧問弁護士であっても全ての法分野に通じているわけではありません。お医者さんほど専門分野に分かれているわけではありませんが、得意不得意はありますし、手掛けたことがない分野というのもあります。例えば、私(神田)で言えば、離婚事件と交通事故事件は経験していません。「下町ロケット」という直木賞作品がありますが、この作品の前半は特許訴訟に関する話です。とある中小企業に対し、上場企業から特許訴訟を提起された。その中小企業の社長は、顧問弁護士に対応を依頼したが、特許訴訟を経験したことがなく、特許訴訟の特殊性などから敗訴寸前までいってしまいます。そこは、小説ですから、敗訴寸前までいって特許専門弁護士が現れ、窮地から救うということでめでたしめでたしになりました。しかし、実際にその様なことが起きたら最悪のことも考えられます。この小説の主人公の社長も、もっと早い段階で、顧問弁護士の訴訟追行のやり方におかしいと思ったときに、他の弁護士の意見を聞いて見ていたらもっと展開は変わっていたかもしれません。

何故、セカンドオピニオンを求めることが重要かといえば、自分のことは自分で調べて、自分で決めるという自己判断・自己決定の理念なのです。その専門家を信じたいという気持ちが強すぎても、他の人の意見を聞きたくないということにもなりがちです。しかし、1人の意見しか聞かないということは、自己判断・自己決定を放棄しているのと同じなのです。より自分自身を客観的にみるためにも、セカンドオピニオンを取ることが重要なのです。

私自身も、クライアントから、「他の弁護士のセカンドオピニオンを取ってもいいか」ということを(申し訳なさそうに)聞かれることがありますが、全く気にしていません。むしろ、上述した趣旨からも積極的にセカンドオピニオンを取ってくださいと申し上げています。

会社の来し方行く末を最終的に決定するのは経営者ご自身なのですから、弁護士に何ら遠慮することはありません。弁護士が会社の将来を担保することはできないのです。セカンドオピニオンを取られたために、クライアントが離れるということは、それはその弁護士に、少なくとも当該案件に対応するための能力が不十分ということであり、仕方がないことです。御社の顧問弁護士が真のプロフェッショナルであれば、セカンドオピニオンについてそのように客観的に受け止められることでしょうから、決して失礼ではないのです。逆に、そのような客観的視点を拒絶するような弁護士であれば、そもそも御社のあらゆる事項について全面的に相談できる顧問弁護士としてふさわしいのかどうか、疑問符がつくのではないでしょうか。