東京で不動産や法律相談に関する弁護士へのご相談は神田元経営法律事務所へ
神田元経営法律事務所 TEL:03-6418-8011
平日 9:00〜17:00
お問い合わせ

企業法務全般

TOP > [企業法務全般]企業法務に関するご相談は神田元経営法律事務所へ

業務内容

神田元経営法律事務所
〒107-0062
東京都港区南青山5丁目11番14号
H&M南青山EAST301号室
地図はこちら

最近の解決事例紹介(企業法務編)− 東京電力に対する追加請求 2013.10.1

シェア
 今回は、平成24年9月14日付にて紹介しました「東京電力に対する損害賠償請求」の事案(*)につき、その後、新たに追加請求をして、原子力紛争解決センターにおいて和解が成立した事例をご紹介いたします。なお、当事務所の依頼者は、前回ご説明のとおり、福島県内の観光業を営む会社です(わかりやすく「甲社」とします)。

 今回の福島第一原発の事故以前に発生した原子力事故としては、茨城県東海村のJCO事故がありますが、同事故においては、収束宣言が政府からなされましたが、この収束宣言までに発生した原子力事故と相当因果関係のある損害については、その賠償がなされたということでした。そして、今回の原子力事故による被害者からの損害賠償についても、JCO事故において適用された賠償基準をほぼ踏襲していますので、収束宣言がなされるまでは(本当に収束するのでしょうかというそもそもの心配はともかく)、本原子力事故と相当因果関係のある損害については賠償されることとなるのが基本です。つまり、原発事故から一定期間の損害について賠償がなされたとしても、その後の損害についても、収束宣言があるまでは、さらに別途請求できることになるわけです。
 甲社の場合は、原発事故発生から約1年分の損害をまず第1次分としてまとめて賠償請求をして、前回ご紹介のとおり、原子力紛争解決センターのADRにおいて和解が成立したわけですが、和解が成立した期間以後についても原子力事故と相当因果関係のある損害(甲社の場合は、主に風評被害ですが)が発生し続けているので、やはりある程度の期間をまとめて、今回、新たに、追加分として東京電力に請求したわけです。

 東京電力が指示している請求方法というのは、3か月分の損害を1単位としてまとめて賠償してほしいというものですが、甲社の月毎の売上も原発事故後は、事故前の傾向とは違ってきているようで、必ずしも毎月事故前の売上よりも下回るということはなく、全体としては、事故前の売上高には達していないものの、ある月だけを取り上げれば、事故後の売上げの方が事故前よりも大きいということもあるようでした。
 そこで、月毎に売上高を分析し、原発事故前の売上高を上回っている月については請求から控除して、売上げが下回った月をまとめて請求することとしました。これに対し、東電からはいいとこどりの請求ではないかという反論がありました。センターの方も、東電の指示する3か月分をまとめて請求する方式が必ずしも正しいとは言えないものの、どのようなくくりが正しいかは判定が難しいということで、センターからは、そもそも売上高が原発事故前の水準を超えている理由として、甲社の「特別の努力」の有無を指摘されました。なるほど、「特別の努力」がないというのであれば、甲社の損害と原発事故との間の相当因果関係が薄れているとも考えられ、損害が生じていことになりそうです。
 確かに、甲社は、原発事故後、事故前とは違った形で各都市でのプロモーションを行っており、それが売上げに貢献しているということも聞いていましたので、早速、甲社社長に「特別の努力」としての販促活動についてまとめてもらい、センターに提出しました。これに対して、東電側からは、原発事故前から行っている販促活動と大差ないという反論が出てきましたが、最終的には、センターから当方の主張の数字と、東電の主張の数字を足して2で割った金額で和解案が提示され、甲社社長にもご納得頂き、和解が成立しました。

 今後は、原発事故から時間が経過することにより、原発事故と損害との相当因果関係が、特に風評被害については問題になってくるかと思われますが、本原子力事故の収束宣言については、汚染水問題をはじめとして未だ抜本的な解決の糸口も見えない現状では、当分出されるような状況ではないのではないでしょうか。

※ http://www.kanda-law.jp/zenpan_r1.html
シェア